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大ブレークの予感…開幕前にドジャースの怪腕スネルから本塁打! 阪神・佐藤輝明が語っていた「しっかり当たれば、飛ぶ」の深い意味とは?
posted2025/05/08 17:40

開幕から好調を維持する阪神・佐藤輝明。5月8日現在、11本塁打31打点の二冠
text by

金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph by
Takuya Sugiyama
発売中のNumber1118・1119号に掲載の《[クリーンアップ・インタビュー(1)]佐藤輝明「考える大砲」》より内容を一部抜粋してお届けします。
怪腕スネルから本塁打
Good and bad fortune are like a twisted rope──禍福は糾える縄の如し。
DeNAを京セラドーム大阪に迎えてのホーム開幕3連戦、佐藤輝明は禍いの真っ只中にあった。
スタートは順調、いや、最高だった。広島での開幕戦、彼のバットは最初の打席でライトフェンスの向こう側へとボールを放り込んだ。チームの勝利に直結した決勝2ランに、プロ5シーズン目を迎えた佐藤の大ブレークを予感したファンも少なくなかったことだろう。
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予兆は、あった。
3月16日、東京ドームでロサンゼルス・ドジャースと対戦した阪神は、前日のシカゴ・カブス戦に続き、3-0の勝利を収めた。勝負を決めたのは、4回裏、ブレーク・スネルから佐藤が放った3ランだった。
最速100マイル(約161km)、平均でも95.7マイル(約154km)の強いフォーシームにチェンジアップ、カーブ、スライダーなどの鋭い変化球をちりばめるスネルは、通算の奪三振率で長いメジャーリーグの記録を塗り替えうる怪物左腕である。特に、左バッターに対する強さは圧倒的で、9シーズンにわたる全キャリアにおいても15本、昨シーズンに関していえばたったの2本しか本塁打を打たれていない。
そんな怪物から、佐藤は打った。今年こそ、ついに今年こそ才能を全面的に開花させてくれるのではないか――期待は、いやが上にも高まっており、加えて、開幕戦での第1打席ホームランである。これでテンションの跳ね上がらない阪神ファンは、そういるものではない。
鳥谷敬「よくわからないんですよね」
ところが、ここから佐藤は泥沼に陥った。
広島との3連戦で彼が放った安打は、結局、森下暢仁から打った2ランだけだった。打率は1割を切り、続くベイスターズとの初戦も4打数ノーヒット、3三振に終わった。第2戦の第2打席で、ようやく今季2本目、17打席ぶりのHランプを灯したものの、佐藤の表情はどこか晴れないままだった。
4月3日、大阪・MBSラジオの解説を務めていた鳥谷敬は、懸念の色を強く滲ませながら言った。
「見た感じ、真っ直ぐを待っているのか、変化球を待っているのか、よくわからないんですよね」
待っていれば差し込まれるはずのない真っ直ぐに差し込まれ、待っていればもう少し対処できるはずの変化球に泳がされている後輩の現状が、鳥谷にはどうにも歯がゆかったのだろう。それは、鳥谷に限らず、バッティングのメカニズムに一家言を持つものであれば、誰もが抱く類の懸念だったのかもしれない。
佐藤は、何かがおかしかった。