「日本は当然のようにアジアNo.1の地位を」J2長崎新スタジアムに感動…トルシエが本音で語る「言いたいのはモリヤスのマネジメントに関してだ」 

「私はスタジアムを訪問してクラブ幹部と会った。人々の集いの場を提供したいという強い意志を感じた。また長崎には長い歴史がある。江戸時代は海外への唯一の窓口であったうえに、第二次世界大戦では原爆が投下された。生命に対する強い意志がこの街からは感じられる。

　クラブ首脳も海外との交流を深め、国際的な親善大会を企画している。サッカーを契機として、人間的な国際交流を実現しようとしている。具体的には平和のための国際大会の開催だ。毎年、海外からチームを招待して、平和と共存の概念のもとに海外の社会と交流を深めていく。それは長崎市の政策理念でもある。スタジアムの存在が、その理念を具現化しようとしている」

J1定着のために克服すべき課題は多い

――長崎はスタジアムが地域の文化的・社会的な中心になるのですね。

©Takuya Sugiyama

ADVERTISEMENT

「その通りで、トップチームに関していえば、J1に定着して活躍できることを望んでいる。真のプロフェッショナルなクラブを構築し、Jリーグのトップになることを。

　今日のシステムでは安定した収入をクラブが得ることが不可欠だ。経済力を強化するためにも、サッカーが与えるイメージは欠かせない。スポンサーを獲得し、人々の興味を引くためにもクラブはJ1に定着する必要がある。そのためにはまだまだやることがある。

　長崎には自前の練習場がなく、高いレベルの選手を育成するラボ（育成機関）も整ってはいない。チームをJ1に定着させる体制も不十分だ。足りないものは多く、今はまだ社会的な理念と文化的な理念だけが認知されているに過ぎない。エリートのプロスポーツに関しては、クラブがJ1に定着するために克服すべき課題は多い」

©Masashi Hara/Getty Images

経済力は…だが、日本のエコシステムがあるからこそ

――日本のクラブがヨーロッパのクラブに経済的に太刀打ちできなくなって久しいです。ただクラブ内部と周辺にはとても熱いものがあるということでしょうか。

「文化的な環境が整い、友好的でも家族的でもある。たしかに現状でヨーロッパのクラブに経済的に対抗できない。例えば日本では、巨額なテレビ放映権料が支払われているわけではない。テレビ放映権は、ヨーロッパのクラブ収入の大半を占めているが、日本ではそれ以外のスポンサーが必要で、スポンサーなしには成り立たない。それはアジア全体、ベトナムや中国、韓国でも同じ問題を抱えている。

【次ページ】　言いたいのはハセベでなく、モリヤスに関してだ