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「日本は当然のようにアジアNo.1の地位を」J2長崎新スタジアムに感動…トルシエが本音で語る「言いたいのはモリヤスのマネジメントに関してだ」
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/04/13 17:01

来日したトルシエの心を打った日本サッカーの一例として、新スタジアムができたV・ファーレン長崎の取り組みがあるという
クラブは企業の意志と経済的なサポートで存続している。その現実があるから、日本のクラブは名前のある外国人選手を獲得できない。だがそのことが、日本人選手の育成に影響を及ぼしてはいない。日本人選手を育成しているのは金の力ではない。張り巡らされたスカウト網や精緻な育成プログラム、総合的な育成政策により選手は育てられている。それが以前話した〈日本のエコシステム〉でもあり、世界で最も優れているシステムの証でもある」
――世界に誇れる育成システムは、金の力で生まれたのではないと。
「それは日本人の高い規律意識とも結びついている。指導者の能力の高さや優れた技術プログラム、高度なテクノロジーの成果でもある。地理的に日本はモダンフットボール世界の中心から遠く離れているが、技術大国であり世界の情勢を周到に観察して精緻な情報を集めている。その分析をもとに、プロジェクトを完璧に遂行している。また自分たちで、最善のプロジェクトを作り出している」
オカダサン、ミヤモト…誰もが真摯だ
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――そうかもしれません。ところであなたは川淵三郎さん(日本サッカー協会相談役)はじめ大仁邦彌さん(日本サッカー協会最高顧問)や田嶋幸三さん(日本サッカー協会名誉会長)、岡田武史さん(日本サッカー協会副会長)、宮本恒靖(日本サッカー協会会長)らと再会して話をしています。また森岡隆三や高原直泰らとも旧交を温めましたが、どんな印象を持ちましたか。
「会った人々の多くは長老的な立場の人たちだった。第一線は退いたものの豊富な経験があり、直接的な権限はなくとも重要な決定を下す際にはそれなりの影響力を持っている。彼らから感じたのは、日本サッカーを進化させたいという真摯な気持ちだった。若い宮本も同じ思いを言葉にしていた。
そこに革命的な何かがあるわけではない。今、日本サッカーという列車は順調に走っている。その原動力に変わりはなく、別の新しい何かを求める意思は感じられない。継続性のなかにあり、継続性とは優れた選手を育成するシステムであり、日本人選手をヨーロッパのビッグクラブに移籍させることだ。その結果、日本はW杯に8回連続で出場を果たし、アジアカップでも毎回のように優勝争いを演じている。FIFAランキングではアジアNo.1の地位を当然のように獲得した。アジアで他にチャレンジするものはもう何もない。至福の時を迎えているといえる。
だが、世界に向けて挑戦したいのであれば――つまり世界のトップ15以上の地位を得たいのであれば、日本代表のマネジメントを見直さねばならないかもしれない」
言いたいのはハセベでなく、モリヤスに関してだ
――長谷部誠を代表スタッフに加えたのは、マイナーチェンジではありますがマネジメントの強化です。
「そういうことではなく、言いたいのは森保に関してだ」〈つづく〉
