フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「天才少女」と呼ばれたアリサ・リュウの“劇的復活”…16歳でフィギュア引退後、コーチにかかってきた1本の電話「今のアリサは偽りない彼女自身」
text by

田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2025/04/04 11:03
2年半のブランクを経て、世界選手権で劇的な優勝を果たしたアリサ・リュウ(米国)
「今のアリサ・リュウは、偽りのない彼女自身」
リュウは2024年3月、SNSで復帰を宣言。今シーズンはスケートカナダで6位、NHK杯4位、全米選手権2位でボストンへの代表に選ばれた。
「今の彼女が引退前と一番違うのは、全てを自分の意志でやっているということ。衣装も、ヘアスタイルも、全てが彼女がやりたいようにやっている。今のアリサ・リュウは嘘偽りのない、彼女自身なんです」
もちろん子供の頃も、嫌々滑っていた訳ではない。
ADVERTISEMENT
「彼女はずっとスケートのことを愛してきた。でも子供の頃は、周りの人が彼女の代わりに色々なことを決めていました。ここでのアリサの優勝は、すべての女子選手にとって勇気を与えると思うんです。どんな年齢でも、どんなタイミングでも、夢を実現させたいという強い意志があれば可能だということを証明したのですから」
リュウの優勝は全米女子として2006年のキミー・マイズナー以来、実に19年ぶりだった。来季は当然、ミラノ・コルティナオリンピックを目指す。現在3アクセルにも取り組み、体調を見ながら4ルッツにも再挑戦するという。
「父には一番最後に伝えたの」
ところで家族に復帰を伝えた時の反応は、どうだったのだろうか?
「私は父には一番最後に伝えたの」と悪戯っぽく微笑んだ。「だから彼は、世界が知った時に同時に知ったんです。でもとても喜んでくれました」
そのリュウ氏が立ち上がって歓声をあげる姿が、会場のスクリーンに映された。彼の弁護のために一言加えると、スケーターが若いうちは親が全てを決めるというのは少しも珍しいことではない。だがアリサ・リュウにとっては、自分の心に素直に従うということが世界チャンピオンへの道だった。
UCLAを休学してオリンピックを目指すというリュウが、来季どのような戦いぶりを見せるのか楽しみだ。


