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届かなかった1勝…“パ・リーグ最多勝投手”伊藤大海がこだわる新庄監督との“果たせなかった約束”「監督ってポジティブにさせる天才なんです」
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/04/01 11:02

14勝をあげ最多勝に輝いた日本ハムの伊藤大海。だが、新庄監督との「約束の15勝」にはあと1勝届かなかった
「『楽しむ』の字も好きなのですが、たのしむ範囲が狭い気がして……。『愉しむ』の方がなんか壮大だと感じたんです。僕たちが試合で愉しむというのは、愉しむべく資格を持ってそこに立てるかどうかがすごく大事だと思いました」
2年前の“約束”「届かなかった1勝」
話を24年に戻そう。順風満帆だったファイターズにも暗雲が垂れこめてきた。6月の交流戦に入ると勢いが止まり、黒星が積み重なっていく。だが、嵐がやって来たところで連敗を2度食い止めて踏ん張ったのが伊藤だ。8月下旬から9月には5連勝で勝ち星を14勝まで増やし、CS進出の原動力となった。新庄と交わした2年前の約束まであと1勝に迫っていた。
10月8日、伊藤は公式戦の最終登板となるゴールデンイーグルス戦を迎えた。7回2失点と力投したが、援護に恵まれずに完封負け。15勝には到達できなかった。
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翌日、新庄はインスタグラムで「15勝の約束」を紹介し、投稿をつづけた。
《惜しくも1勝たりはしなかったけど最多勝と言うタイトルをしっかり取ってくれました 本当にありがとう‼ 伊藤君にとってここからが、本当に大事なプロ野球人生が始まる 計り知れない努力をし続けないと球界ナンバー1投手は難しい 大海なら出来る このタイトルに対し 大海がどう思うかで 彼の人生は更に変わる‼》
伊藤にとって「届かなかった1勝」を摑むことが、25年の大きなテーマになる。
15勝目、そしてホークス戦での勝利。
伊藤も新庄も昨年の秋、大きな忘れ物をしたのだ。だから、伊藤はCSで敗退した翌日、25年の監督続投が流動的だった新庄の留任を願い、偽らざる思いをメディアに吐露した。