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史上初の兄弟によるタイトル争いの可能性も…マルケス兄弟2戦連続1−2フィニッシュで際立つ、弟アレックスの奮闘《初優勝間近か》
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/03/22 11:02
2戦連続2位と絶好調のアレックス・マルケス。MotoGPクラスでの初優勝も視界に入ってきた
兄を心からリスペクトしているアレックスは「我々は兄弟だし、マルクが自分より優れているところがあっても、それを受け入れることに何の問題もない」と語っているが、今シーズンは快進撃を続けるマルクの最大のライバルに浮上。MotoGP初優勝の日が近いことを感じさせている。
一方のマルクはドゥカティに乗り換えた昨季、乗りにくい23年型で名車の誉れ高い24年型と対等にわたりあってシーズン3勝を挙げた。今季は24年型を踏襲する25年型で大ブレイクしているが、アレックスについて「コースのいくつかで自分より速かった」と評価した。だが、アレックスにとってマルクの速さは圧倒的であり、「マルクが抜いていったとき、まるでチャオと言われたような気分だった」とコメントしている。
マルケス兄弟の快進撃の一方、タイトル奪還を目指すドゥカティワークスのエース、フランチェスコ・バニャイアは、マルクとは対照的に25年型デスモセディチのセットアップに苦戦。アルゼンチンGPでは表彰台に立てず、次戦アメリカズGPからはアレックスと同じ24年型に戻すことを検討している。
兄弟によるチャンピオン争いの可能性
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MotoGPクラスの戦いを左右するのは、いつの時代もタイヤをどう使うか、ということに尽きる。この2戦のマルケス兄弟の戦いを見ても、タイヤのマネジメントが勝敗の決め手となった。そんな時代にあって、今年のアルゼンチンGPではマルクがプラクティスで1分37秒295、予選ではさらにタイムを更新する1分36秒917をマーク。テルマス・デ・リオ・オンドで初めてGPが開催された14年に、ホンダ時代のマルク自身がマークした1分37秒683を11年ぶりにブレイクして話題になった。
あの頃に比べると、路面のコンディションが悪くなったり、タイヤのレギュレーションがかわるなど、さまざまな変更があった。ただ、それにしても、日進月歩のレースにおいて11年間サーキットベストタイムが破られなかったというのはすごいことである。あの頃、ブリヂストンはスタートからゴールまでタイムが落ちない素晴らしいタイヤを供給していたし、内圧の問題も今ほどクローズアップされていなかった。
最速タイム更新でも復活を証明したマルクと、兄に肉薄したアレックス。このまま行けば、グランプリ史上初の兄弟によるチャンピオン争いも夢ではない。2025年は次々に歴史を塗り替えてきたマルケス兄弟が演出する、初めてづくしのシーズンになるかもしれない。

