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史上初の兄弟によるタイトル争いの可能性も…マルケス兄弟2戦連続1−2フィニッシュで際立つ、弟アレックスの奮闘《初優勝間近か》
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/03/22 11:02
2戦連続2位と絶好調のアレックス・マルケス。MotoGPクラスでの初優勝も視界に入ってきた
マルクはそんなアルゼンチンGPの戦いをこう振り返る。
「今日は何度も2位で十分だと自分に言い聞かせた瞬間があった。最終的には勝つことができたが、何度も転倒リスクの高い走りを強いられた」
一方、アレックスは兄との戦いをこう振り返る。
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「レース終盤、マルクが僕を追い抜こうとして5コーナーでオーバーランしたときに僕は本気でプッシュした。引き離そうと思って次の周回は1分38秒3のファステストラップを刻んだ。でも、マルクは38秒2を出してすぐ後ろにいた。そのときすでに自分は限界だったし『今日は2位でいい。このままゴールしよう』と思って、少しペースを落としたんだ」
その結果、マルクはアレックスを逆転してからあっという間にリードを広げることになったが、タイGPほど余裕ある勝利ではなかった。
アレックスの速さの理由
2戦連続で勝利したマルクをギリギリまで追い込んだ、アレックスの速さの要因はなんなのだろう。その最大の理由は「天才」と呼ばれる兄の背中を追いかけ、自分に何が足りないのかを追求する努力の姿勢にあると感じる。それがMoto3とMoto2でチャンピオンに輝き、MotoGPでも今大会で7度目の表彰台獲得という実績につながっている。
開幕戦タイGPと第2戦アルゼンチンGPでは、マルクの背中を追いかけ、前を走ることもあった。何のプレッシャーもない精神状態でレースに挑めていることも要因のひとつだ。さらに、ドゥカティの24年型のマシンとの相性の良さも速さの要因に挙げられる。昨季は癖のある23年型マシンに大苦戦したが、今季は完成度の高い24年型に乗り換えて見違えるような走りを見せ、アレックス自身も「24年型は自分のライディングに合っている」と語っている。
マルケス兄弟は同じ家に住んで常に一緒にトレーニングをこなし、だれよりも密に情報交換をしている。「ふたりの間に秘密はないよ」という仲の良いマルケス兄弟は、アルゼンチンGP前にマルクが「今日はスタートからいくぞ」と宣言し、アレックスは「前に出たら全力でいくからね」と語り合っていたという。

