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落合博満に星野仙一が激怒「あの1回だけだった」現場にいた中日選手が初証言「今だから言うけど…」星野監督の初優勝シーズン、鈴木孝政も怒鳴られていた
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岡野誠Makoto Okano
photograph byKazuhito Yamada
posted2025/03/13 11:02

中日監督時代の星野仙一(1988年撮影)
「オチ!! お前が打たないとこうなるんだ!!!」
部屋のガラス窓が割れんばかりの一喝だった。就任2年目で、三冠王へ初めての激怒だった。
「やっと言ってくれた……みたいな感じでした。選手の空気に勘付いて、いつか言わなきゃいけないと考えていたんでしょう。自分の知る限り、落合さんへの叱責はその1回だけだったと思います」
孝政も怒られた…テーブル蹴飛ばして
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ベテランの孝政も全員の前で叱られた。怪我の状態が良くなった主砲の復調とともに、チームは上昇気流に乗り、8月31日に落合のサヨナラ3ランでマジック25を点灯させる。3日後、東京ドームの巨人戦で、孝政は2カ月半ぶりの先発マウンドに上がった。
しかし、原辰徳、有田修三にホームランを浴び、2回途中でノックアウト。宿舎の『サテライトホテル後楽園』でミーティングが始まると、怒りに満ちた星野が椅子に座りながら、詰問した。
星野:孝政、何を考えて投げたんだ?
孝政:5回までゲームを作ろうと必死に投げました。
星野:……1回、1回、1人、1人じゃねえのか!!!
その瞬間、星野は目の前のテーブルを蹴飛ばした。倒れた机の車輪の残響は、後方に座っていた孝政の耳にも響き渡った。
「ビックリしましたよ。ベテランを締めれば、みんなに言わなくてもいいと考えたんでしょうね。星野さんは、その日のうちに怒りを収めるんですよ。次の日会っても普通で、さっぱりしている。ネチネチしていない」
翌日、中日は彦野利勝の満塁弾などで、巨人に引導を渡した。優勝が見えてきた段階での激昂は、チームを引き締める狙いがあったのかもしれない。
「仙さんは7つ怒っても、3つ必ず持ち上げる。怒るのも簡単じゃないだろうけど、3つ褒めるって難しいと思うよ。だから、選手から嫌われないの。俺はあんまり褒められなかったけど(笑)。まあ、ベテランだったからね」
「監督が呼んでいます」日本シリーズ後に…
常々、「選手はいい着地をしなきゃダメだ」と言っていた星野はマジック1で迎えたヤクルト戦、11対3と大量リードの8回に孝政をマウンドに送る。