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「あれ、タケ(久保建英)の本心ですから」“五輪・W杯で連続落選”日本代表DF菅原由勢が報われたゴール「一番感動した」瀬古歩夢と谷晃生の祝福
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林遼平Ryohei Hayashi
photograph byZhizhao Wu/Getty Images
posted2025/03/13 17:02

日本代表24年11月シリーズでの一コマ。久保建英とコミュニケーションを図る菅原由勢
「だから、試合に出た時に自分の存在価値を証明しなきゃいけないという強い思いがありました」
様々な思いを巡らせた結果、「とにかく自分の成長にフォーカスを当てて、自分でやれることをやり続けるということだけを考えるようになった」菅原は、途中出場で自身の思いをピッチにぶつけることになる。
投入早々からアグレッシブなプレーを披露した菅原は69分、敵陣中央でボールを受け、伊東純也とのワンツーから一気に加速してボックス右のスペースへ。最後は中央への折り返しを匂わせながら、深い位置から右足でニア上を撃ち抜き、大きな4点目をもたらした。
コウセイと歩夢が…タケも本心ですから(笑)
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メンタル的に難しい時期が続いていたこともあり、特別な思いが込み上げてきた。そして、その思いを増幅させたのが仲間の存在だ。ゴール後、若い時から常に切磋琢磨してきた同世代の瀬古歩夢や谷晃生がベンチから先導を切り駆け寄ってくると、先輩たちと共に思い切り祝福してくれた。その行動に思いが溢れた。
「あれが一番感動しました。みんな、すごくサポートしてくれてたんです。『お前はプレミアでプレーしてるんだから、試合に出るのは時間の問題だろ』とか、すごくモチベーションを上げるような言い方をしてくれて。やはり試合に出られない選手は難しいじゃないですか。それをみんながわかってくれて、結果を残したときにああやって喜んでくれたというのが本当に嬉しかったですね。
それにコウセイと歩夢もめっちゃきてくれて。タケ(久保建英)も次の日のインタビューで『僕が一番嬉しかったです』みたいなメディア向けのコメントを残していたけど、あれは彼の本心ですから(笑)。オレもあいつが点を決めた時は嬉しいし、歩夢が素晴らしいパフォーマンスを中国戦でした時にはベンチから見ていて頼もしいなと思う。難しい時間やいい時間を一緒に過ごしてきた仲間なので。今までで一番、意味のあるゴールというか、本当に人生で一番価値のあるゴールだったなと思います」
試合後には森保一監督にも「難しい状況の中でもチームのために、自分のためにという中で、ピッチで証明してくれてありがとう、みたいな評価をしてもらった」という。もちろん、あのゴールによってレギュラーの座を掴んだわけではないが、苦しい時期を抜け出す一つのきっかけとなったことは間違いない。
最低条件は「W杯に出場するに値する選手」
3月のW杯アジア最終予選を勝ち抜ければ、来年にはカナダ・メキシコ・アメリカ合衆国による3カ国共催のW杯が待つ。そこに向けてまだまだ苦難の道は続いていくだろう。それでも菅原は、自分の夢のために努力を惜しむつもりはない。
「もちろん、サッカー選手としてW杯に出場して優勝することは夢。そこに対して情熱は誰よりもあると思う。でも、かといってそれだけで優勝できるわけじゃないのも難しさもわかってる。まずは自分がそこに選ばれるだけのパフォーマンスを残さなければいけないなと。プレミアリーグで結果を残すことができれば、絶対にそこには近づけるわけなので。だから、チームでやるべきことをやって、W杯に出場するに値する選手になることが最低条件だと思っています。
W杯に出るに値する選手になることが必要だし、それは常に頭の中にとどめておかなきゃいけない。そのためには、サッカーと向き合っていくことが大事だと思う。目先のものをしっかり一つひとつやりながら、毎日しっかり成長していければと思います」
「まだまだここからです」
そう語った男の表情には、普段の明るい雰囲気とは異なった強い覚悟を感じ取ることができた。もう迷うことはない。いくつもの挫折を味わいながら、それを含めて進化を遂げてきた菅原は、次のW杯に向けて歩みを止めることなく進み続ける。〈第1回からつづく〉
