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「試合に勝って、勝負に負けた」“完璧ではない神童”那須川天心19歳の涙…“宿命のライバル”武尊とロッタンがいま対戦する意味「闘いはまだ続いている」 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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posted2025/03/05 17:02

「試合に勝って、勝負に負けた」“完璧ではない神童”那須川天心19歳の涙…“宿命のライバル”武尊とロッタンがいま対戦する意味「闘いはまだ続いている」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2018年6月17日、当時19歳の那須川天心はロッタン・ジットムアンノンに延長戦で辛くも勝利。試合後にはリングで涙を流した

 本来ならば格闘技は、勝った者がすべてを手にして、敗者はすべてを失うものだ。しかし、この試合に敗者は存在しなかった。天心と武尊はどちらも勝者であり、誇り高い勇者だった。

武尊はロッタンを倒して「天心超え」を果たせるのか

 2025年3月23日に開催されるONE Championshipの日本大会。かつて天心に敗れた武尊とロッタンが、さいたまスーパーアリーナで対戦する。そもそも、引退を撤回した武尊がアジア最大の格闘技団体ONEと契約した理由は、ロッタンと試合がしたかったからだ。

 会見で武尊はこのように述べている。

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「格闘技において『誰に勝ったから誰より強い』という三段論法は存在しないと思います。ロッタン選手に勝ったからといって、天心選手に勝ったとは決して言えない。ただ、ロッタン選手にKOで勝つことで『THE MATCH』の負けの悔しさを自分で納得できるのかなと。自分の中でのケジメとして、KOで勝ちたいです」

 いまとなっては、天心と再戦したくても叶わぬ状況だ。武尊は宿命のライバルがKOできなかったロッタンをKOすることでしか、3年前のあの敗北を払拭できないのだろう。だからこそ「この試合の次は一切考えてない。自分の格闘技人生すべてを出すつもりで挑む」とも語り、揺るぎない覚悟でこの試合に臨もうとしている。

 格闘家・那須川天心の戦績は決して完璧ではない。過去にはロッタン戦での負けにも等しい勝利や、フロイド・メイウェザー・ジュニアとの非公式戦での完敗もあった。それでも、武尊と世紀の一戦を闘い、勝ち抜いたというプライドが、ボクシングの世界でも「負けない理由」として強く作用している気がしてならない。

 武尊はロッタンを倒すことで「天心超え」を果たせるのだろうか。武尊にとっての天心を巡る旅は、これで終わりになるのだろうか。

 ふたりの闘いは、まだ続いている。

前編とあわせてお読みください>

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「那須川天心がナーバスになっている…」モロニー戦でカメラマンが察知した“異変”…思い出した“あの激闘”「天心の勝ちはない。よくて引き分けだ」

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