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「抜き打ち検査は本当にランダム」高梨沙羅も苦しんだ“規定違反”に金メダリスト・船木和喜の意見…「情報伝達が遅い」日本スキージャンプ界の問題点
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byWataru Sato
posted2025/03/04 11:03
今も現役を続ける五輪金メダリスト・船木和喜(49歳)が考える、スキージャンプ界のルール改正
「抜き打ち検査は本当にランダムに決まります」
「抜き打ち検査自体は、昔からありました。僕も受けました。もうほんとうにランダムに検査する選手が決まります」
船木は長い競技生活で失格になったのは1度だけだと語る。
「夏の大会で、通気量を測ったんですけど、汗をかくと縫い目の中に膜が張ってしまうのでそれで空気が通らない。それで失格と言われました。その後、ルールが変わって夏は通気量を測らないことになりました」
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その1回限りだった。
「僕はデサントというメーカーに社員として所属していたので、失格になるのはとんでもないことなんですね。自分のメーカーに泥を塗ることは絶対許されなかった。コーチの八木弘和さんも絶対許さない人だったので、絶対にクリアできるように少し小さめとか少し短めのものを使っていました。ぎりぎりのところを攻める選手の気持ちは分かりますけれど、僕はやっぱりメーカーに所属というのが大きかったですね」
「こいつよくやってるな」小林陵侑に送ったエール
ヨーロッパがジャンプの本場であるという意識、それに対する自負、だからこそ、船木はブーイングを浴びた。さまざまな面で嫌な思いをすることもあった。
ルール改正への対応にも取り組み、戦い続けた船木はふと語った。
「小林(陵侑)くんが勝ったときは、『こいつよくやってるな』って思いました。どれだけ嫌なことをされているかって想像できますから。その中でも平然と結果を残せるのはほんとうにすごいことです。もう1人、アダム・マリシュという強い選手がいました。彼も相当嫌なことをされているんですよ。彼はポーランドの選手で、それでもずっと勝っていて、すげーなーって思っていました」
自身、嫌な思いをしつつ、それにくじけることなく、トップジャンパーたる活躍をみせた。だからこそ寄せる共感だろう。
そしてさまざまな思いを味わいつつ、ジャンプへの熱は変わらない。だから船木は、競技生活と並行して行ってきた活動がある。《インタビュー最終回に続く》

