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「えっ、日本人なのにドラゴンボール知らないの?」頭脳派セッター関菜々巳(25歳)が異国で痛感した“無知な自分”「自己肯定感が低い自分を変えたい」
text by

田中夕子Yuko Tanaka
photograph byTakahisa Hirano
posted2025/02/28 11:04
今季からイタリアの強豪イモコ・コネリアーノでプレーするバレーボール日本代表・関菜々巳(25歳)
2018年に東レアローズ(現・東レアローズ滋賀)に入団するとすぐに出場機会に恵まれ、19年には日本代表に初選出。東京五輪の出場こそ逃したが、パリ五輪予選では正セッターに抜擢され、本大会でもメンバー入りを果たした。今季から新設されたSVリーグでプレーする選択肢もあったが、関は海を渡る決断をする。
「自分が一番、自分のことを好きじゃないからかもしれない。生真面目なところも、プレーも好きじゃない。でも、だからこそ、自己肯定感が低い自分から変わりたかったんです」
関が初めて海外移籍を意識したのは、前身のVリーグで準優勝した2022/23シーズンを終えた頃。トルコの強豪ガラタサライから興味を示されたことで、異国でプレーする自分の姿を初めてリアルに思い描くようになったという。
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「私はいつも周りの目を気にして、うまくいかなかったことも一つ一つ、全部捨てられずに背負っちゃう。そういう性格だから、毎日の練習も『周りから真面目だと思われているんだから、真面目にやらなきゃダメだ』って自分で自分を窮屈にしていたんです。だから(2023年にイタリアに移籍した石川)真佑から『海外はすごく自由で楽しい』と聞くたびに、いいなぁ、って。トルコのチームが声をかけてくれたと聞いて、できるなら私も海外でやってみたい、という気持ちがどんどん膨らんでいきました」
トルコへの移籍は実現しなかったが、翌年、今度はイタリアのコネリアーノから誘いを受けた。チームの正セッターはポーランド代表のヨアンナ・ウォロシュが務めており、セカンドセッターの立場であることをエージェントから告げられていたが、それでもチャンスを逃したくない思いが勝った。残留を求めた東レも関の熱意を応援し、温かく送り出してくれた。
免許取得に四苦八苦「教習所ではポンコツ」
実は、自分を変えるための新たなチャレンジは、海を渡る前から始まっていた。
車の運転が必須となるイタリアでの新生活に向け、関はすぐに自動車運転免許の取得に挑んだ。高校時代の成績は“オール5”。学科の心配はなかったが、教習所で初めて車に乗った日のことを「とんでもないポンコツ」と笑いながら思い出す。
「教習所内のコースを走る時にカーブで思いっきり段差に乗り上げました。どうしていいか、わけがわからなくて『わーっ!』と叫びながら両手を離したら、教官に『ハンドルから手を離さない!』と言われて『はいっ!!』と。そこからのスタートだったので、国際免許どころか本当に免許が取れるのか、不安しかなかったです(笑)」
無事、昨年4月免許を取得したものの、すぐに日本代表合宿やネーションズリーグ、パリ五輪と連戦が続いたことで、実際に国内で運転できた機会は数えるほど。ほぼ“初心者”の状況でイタリアに飛んだ。


