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就活では「体育会はウケが良くなかったです(笑)」卒業後はコンサル業界へ…早大で箱根駅伝3度出走“一般入試の星”はなぜ実業団に進まなかった?
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和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2025/02/23 11:02
一般入試ながら3度の箱根路で好走した早大4年の菅野雄太。卒業後は大手コンサルタント会社に就職する一方、市民ランナーとして競技は続行するという
卒業後は大手コンサル会社へ就職予定
コンサルティング・ファームという業界に絞ったものの、インターンには合宿等があって行けず、就職スクールに通うこともできない。週末の練習後のまとまった時間を使って、書籍等でロジカルシンキングを学び、ケース面接の勉強をした。いざ面接まで漕ぎ着けても苦難はあった。
「超論理的思考でやっていく業界の特性上、意外と体育会というのはウケが良くなかったんです……(苦笑)」
箱根駅伝を走ったという実績は、業界的に全くアピールにならなかった。
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それでもめげることなく、努力の甲斐あって、志望していた企業の内定を勝ち取った。
「決まった会社はPDCAサイクルを強調して、めちゃくちゃ論理的に競技に取り組んできたという雰囲気を出しました(笑)。それが良かったのかな」
就職活動も大変だったが、困難が待ち受けるのはむしろこれからだろう。それは菅野自身、重々承知している。
「特に1年目は研修もあり、必ずしもうまくいくとは思っていません。仕事優先で考えていて、どれぐらい忙しいのかはまだ読めない。1年間の中で競技力に波があるのは覚悟の上で、競技を続けようと思っています。
社会人になると基本的には自分でメニューを組んでやっていくことになりますが、早稲田ではポイント練習の内容などを監督と相談したり、ジョグの距離を自分で考えたりしてきました。早稲田で身についたことは、1人でやっていく上で役に立つと思っています」
自律を重んじる早稲田での4年間を下地に、新たな競技人生を歩んでいくことになる。
「大学ではあまりトラックレースの経験を積めなかったので、トラックでは伸びしろを感じています。エリート競技者路線で何年続けるか分かりませんが、社会人1、2年目はトラックを伸ばせればと思っていて、いずれ大学の競技レベルを超えたい。そして、トラックに満足できたら、自分の得意な部分を生かして、今度はロードを伸ばしていきたいと思っています」
競技者としての自分自身にまだまだ可能性を感じているからこそ、菅野はこのような選択を取ったのだろう。
かつては川内優輝が公務員ランナーとして名を馳せたように、非実業団として活躍する菅野の姿が数年後にあるかもしれない。早稲田で“一般組”の代表として後輩に道を示したように、社業と両立させ、新たな競技者としての道を切り拓いていく。


