甲子園の風BACK NUMBER
「今でも一番すごいと思った投手は奥川君」…甲子園の名伯楽も絶賛 度重なるケガで離脱も…それでもファンが“悲運のエース”奥川恭伸を待ち続けるワケ
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沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2025/02/19 17:00
下半身のコンディション不良で実戦登板回避となったヤクルトの奥川恭伸。ここまでキャンプでは順調な仕上がりを見せていたのだが…
「今でも一番すごいと思ったピッチャーは奥川君」
岡田監督は、「これまで履正社時代から30年以上、高校野球で指導してきましたけれど、今でも一番すごいと思ったピッチャーは奥川君」と取材のたびに口にする。
同級生でしのぎを削ってきた佐々木朗希は今年、ドジャース入りを果たした。
かつて何度も比較されてきた剛腕のライバルが、海を越えて世界の舞台に挑戦する。キャンプではそこについても忸怩たる思いを語っていた。
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「(佐々木朗希のメジャー挑戦は)高校の時から、ずっと言っていましたから。自分は(佐々木を)どうこう言う立場じゃないです。今年はまず、ヤクルトで投手の柱になること。それだけしか考えていません。今年は誰にも何も言わせないくらいの結果を残したいです。相手チームにだけでなく、チーム内のライバルにも勝つ。何勝したいとかはなくて、とにかく与えられた試合で勝っていく。それだけを考えながら投げていきます」
そんな悲壮な思いが成就する前に、またも奥川は大きな壁に行く手を阻まれた。野球の神様はどこまでも残酷だ。
それでも、星稜高校には“必笑”というモットーがある。どんな場面でも、笑顔を貫く。笑顔で終わる。「笑う門には福来る」とも言うが、笑顔が何かを呼び寄せる。未だケガの詳細はわかっていないが、奥川のマウンドでの笑顔が、1日でも早くみられることを祈っている。
それはヤクルトファンのみならず、高校時代から奥川に声援を送り続ける誰もが待ち望んでいることだ。回り道を繰り返してきた背番号18が輝きを取り戻す日を、皆が待っている。

