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「正直、メンバーは凄かった」稲本潤一が忘れ難き“サンドニの惨敗”とドイツW杯の「最強」代表…でも現代表には「普通に負けるでしょ(笑)」
posted2025/02/14 11:02

2006年ドイツW杯、ブラジル戦の稲本。「史上最強」の呼び声高かったが、結果は惨敗のジーコジャパンが印象深いと語るわけは?
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佐藤俊Shun Sato
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JMPA
2000年2月にカールスバーグカップのメキシコ戦で代表デビューを飾って以来、稲本潤一は現役引退までに代表戦82試合に出場し、5ゴールを挙げている。多くの国際Aマッチの中で、一番印象に残っているのはどの試合になるだろうか。
「0‐5で負けたサンドニの試合ですね」
稲本は苦笑いを浮かべて、そう言った。
世界王者に惨敗
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これは2001年3月、前年にアジアカップで優勝した日本代表が、フィリップ・トルシエ監督の母国フランスに乗り込み、フランス代表と戦った試合だ。サンドニのスタッド・ド・フランスは超満員になり、日本代表もベストメンバーを揃えた。しかし、雨交じりでピッチが田んぼ状態になる中、日本の選手はまともにプレーできず、5点を奪われて大敗した。98年フランスW杯で優勝した世界王者の強さを見せつけられた試合だった。
「アジアカップ優勝で勢いに乗ったチームで、ヒデ(中田英寿)さんも合流して、W杯優勝チームと戦えるんで、めちゃくちゃ楽しみにしていました。しかも、海外移籍を実現するために日本の代理人が欧州の代理人をたくさんスタジアムに呼んでくれていたので、気合が入っていたんです。
でも、ドロドロのピッチの中、こてんぱんにやられた。ジダンを始め、フランスはあのピッチの中でも滑らないでボールコントロールできていたけど、俺らはみんな滑りまくって何もできなかった。衝撃的というか、めちゃショックでしたね。これで海外移籍もなくなった。世界王者とは何もかも違う。その差を痛烈に感じさせられた試合だった」
通夜のようだったミックスゾーン
この試合で、稲本ら日本の選手は、世界と十分戦えると思ったことがいかに甘い幻想だったのかを実感し、落胆した。ミックスゾーンは通夜のように静かで、選手たちは世界との差を淡々と語っていた。