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張本智和が「圧倒的に負けた」「今年は彼の年になる」と絶賛…卓球界の新星・松島輝空(17歳)とは何者か? 妹も“史上最年少Tリーガー”の卓球一家
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/30 11:05
全日本選手権で張本智和、篠塚大登らを下して優勝を果たした松島輝空
「(五輪補欠では)二度と行きたくない」
パリ五輪代表選考期間中も成長はやまず、国際大会で海外の有力選手をしばしば撃破。世界ランキングでも日本勢3番手につけていた。
だがパリ五輪代表には選ばれなかった。選考においては最後まで候補として名前が挙がり、松島を選出するかどうか迷ったという。その末に選ばれなかったのは、パリ五輪代表選考において日本が独自に設けた選考会のポイントで3番以内にはいなかったこと、そして2024年の全日本選手権で篠塚に敗れたことにあった。結果、日本代表にはなれず、リザーブ(補欠)に選ばれることになった。
悔しさは大きかっただろう、松島はリザーブとしてチームに同行することに難色を示したという。周囲の説得もあり引き受けたものの、帰国後の取材の場でも悔しさをはっきり示した。
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「初めてのサポートでしたけど、オリンピックの会場を肌で感じて感動もありました。でも練習相手は1日1日が長いと感じましたし、今後、自分は二度と(リザーブでは)行きたくないと思いました」
日本を出発する時点から、航空機内の座席の違いをはじめ、待遇は異なった。代表との差を痛感した。
「次はリザーブではなく、選手で出られるように頑張ります」
帰国後の松島を強くした“強烈な悔しさ”
その思いをばねに日々を過ごし、結実したのが全日本選手権初優勝だった。
松島はこう語っている。
「(張本、篠塚は)どちらも強い選手で、自分がパリオリンピックに出られなかった悔しさもあり、いつか倒したいと思ってたので、この大舞台で勝ててうれしかったです」
「パリオリンピックに行って自分が強くなったというのはなく、オリンピックの環境を味わえたのみだと思っています。出られなかった悔しさがほんとうに強かったので日頃の苦しい練習を乗り越えられたと思います」
松島の優勝で思い出すのは2017年の全日本選手権だ。2016年リオデジャネイロ五輪の代表になれずリザーブとして参加した平野美宇がそれをばねに初優勝、そこからさらなる飛躍を遂げていった。
松島も今大会でポテンシャルを発揮し、一段成長した姿をみせた。
平野のようにここからはばたいていけるか。少なくとも、張本の言うように、きっかけはつかんだ。そして張本らもこのまま引き下がることはない。
切磋琢磨する中で、松島もまた、世界の頂点を目指して、2028年のロサンゼルス五輪出場を胸に進んでいく。

