箱根駅伝「四つ巴のシード権争い」相手選手から“まさかの声かけ”「2人でシードまで一緒に行こう」…東国大アンカーが語った“史上最激戦”全内幕 

　だが、前述のように詳細な情報を持たない大村は、自身と順大の間にシード権の有無という恐怖のラインがあることなど知る由もない。

　前に行く東洋大と帝京大も、すでに背中は見えているのだ。普通に考えれば、古川の提案は渡りに船とも言えた。

「ひとりで追いかけるよりは、2人の方がやっぱり追いかけやすいですから。前の2校を抜けば、確実にシード圏内だろうとは思っていたので」

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　監督車の中から状況を俯瞰していた東国大の中村勇太監督代行も、並走する2人の姿を見て、こう考えていたという。

「2分の1でシード落ちとなると、走る方も精神的にきつい。前の2チームに追いついて、4分の3でシード権獲得になれば――」

　結果的に、両チームの思惑は一致した。タスキを受けてから、前に追いつくために突っ込んでいた大村も、古川の言葉に呼応する形で少しペースを落ち着かせた。そして、そのまま2人はともに前を追いかける形となった。

　結局、大村と古川は6km手前の時点で、前を行く東洋大と帝京大に追いついた。

シードの行方は…「四つ巴」の争いに

　そしてこの時点で、ようやく大村は自身が置かれた状況を正確に把握したという。

「たしか帝京の中野（孝行）監督だったと思うんですけど、4校が並んだタイミングでの監督車からの声掛けで『ここがシード権争いだぞ！ 8位だぞ』みたいなことを話していて。それを聞いてはじめて『あ、この中の1校だけがシードを落とすんだな』というのがはっきり分かった感じでした」

　当然、その声掛けは大村以外の他の3校の選手の耳にも入った。

　その結果、ここから4校による牽制がはじまり、ひとつの集団を形成することになる。そしてそれは、実にこのあと15km以上も続く心理戦のはじまりでもあった。

＜次回へつづく＞

#2に続く

箱根駅伝“史上最激戦の10区”四つ巴のシード争い舞台裏「4人が横一列に並ぶなんて…」選手が振り返る「テレビに映らなかった」超心理戦ウラ話