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箱根駅伝「シューズ勢力図」に異変アリ!? 絶対王者・ナイキの牙城が“8万円超え”爆速シューズで崩され…新興勢力も台頭で「戦国時代」到来!
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byYuki Suenaga
posted2025/01/13 11:01
厚底シューズ登場以来常にナイキがトップだった着用率に「異変」が! シューズ争いも新時代に突入したのか
今大会“最速シューズ”はアディダス
創価大・榎木和貴監督によると、吉田響の快走は、「EVO 1」の爆発力が大きかったという。「直前の練習もEVO 1を使って、攻めの調整ができていたんですよ。やっぱり軽さですかね。2区の上位3人がEVO 1を履いていましたが、終盤までしっかり脚を残せるシューズなのかなと感じましたね」と話していた。
現時点での箱根駅伝“最速シューズ”は「EVO 1」で間違いなさそうだ。
一方、アディダスは最新のレーシングモデル「アディゼロ アディオス プロ 4」を昨年11月27日、世界に先駆けて日本国内限定で先行発売している。同モデルでも3区の中大・本間颯(2年)、8区の青学大・塩出翔太(3年)、10区の青学大・小河原陽琉(1年)が区間賞。
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さらに6区の青学大・野村昭夢(4年)が従来の区間記録を30秒も更新する56分47秒という驚異的なタイムで山を駆け下りて、金栗四三杯と大会MVPを同時受賞した。野村のTVインタビューでは、チームメイトのメッセージが書き込まれたシューズがどアップで映し出されて、情熱を表現したというレッドの3本ラインが輝いていた。
アシックスは「山の名探偵」が活躍
アシックスは前年の24.8%から25.7%にアップして、ナイキを上回った。2021年大会ではまさかの0人に終わったが、同年にランナーの走り方(ストライド型とピッチ型)に着目した「METASPEED」シリーズを発表してから右肩上がりを続けている。
昨年3月には「METASPEED PARIS」シリーズを発売。軽量化しただけでなく、反発性が向上した。今季の学生駅伝は前年と比べて、10月の出雲駅伝で4.4%、箱根予選会で7.6%、全日本大学駅伝大会で2.7%も着用率がアップしていた。
有力選手では全日本大学駅伝8区で日本人歴代2位の好タイムで区間賞を獲得した駒大・山川拓馬(3年)が着用していたが、箱根駅伝で目立ったのは「山の名探偵」というニックネームがすっかり定着した早大・工藤慎作(2年)だろう。
上り坂用にチューニングされたモデルで
前回6位と好走した5区に再登場した工藤は快調なペースで山を駆け上がっていく。そして1時間09分31秒の区間2位で3人抜きを披露。往路3位のゴールに“コナンポーズ”で飛び込み、話題をさらった。工藤は前年のタイムを2分41秒も短縮。純粋に走力が上がったこともあるが、アシックスの“特注シューズ”の後押しも大きかった。
箱根の山の傾斜に合わせて踵をより厚くすることで、上り坂でも平地を走るような感覚に近づけたモデルを着用。「走りのリズムが平地に近くなり、昨年のような中盤の失速がなくなりました。100点です」と工藤は笑顔を見せていた。