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「悲鳴に近い歓声が…」春高バレーの歴史を変えた“無名の1年生エース”柳田将洋の出現…“天才セッター”関田誠大と悲願の全国制覇
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiyoshi Sakamoto/AFLO
posted2025/01/04 17:01
1月開催に移行した初めての春高バレーに臨んだ東洋高のキャプテン、柳田将洋(当時高3)
東洋高は翌年の春高でも優勝候補の筆頭に挙げられていた。そして柳田も世代を代表するエースとなった。アイドル顔負けのビジュアルも相まって会場には多くの女性ファンが集まり、スパイクを決めるたび悲鳴に近い歓声が起こる。日本代表の試合かと錯覚するほどの光景だった。
そんな過剰な注目も柳田にとってはプレッシャーにならなかった。大会の主役に相応しい活躍で、柳田は春高バレーで頂点に立った。
天才セッター関田誠大の登場
この優勝にはもう一人、欠かせない存在がいた。1年生セッターとして抜群の存在感を放った関田誠大だ。
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もともと互いの親が知り合いだった2人は、幼い頃から仲が良かった。中学こそ別々だったが、関田は柳田のあとを追うように東洋高に進学。「ゲームメイクは関田に任せていた。関田が好きなようにやってくれる中で僕らは打っていただけ」と柳田が当時を振り返っていたように、春高の舞台で関田のトスワークが冴え渡った。
決勝の相手は熊本の名門・鎮西高。関田は第1セットから柳田にトスを集めた。前衛、後衛を問わず、当たり前のようにスコアを重ねる姿はまさにエースそのもの。最初のセットを先取した東洋は第2セットも優位に進めた。
地力のある鎮西も反撃に出る。高校屈指の高さを誇るブロックで応戦して柳田のスパイクを塞ぐと、セット中盤に差し掛かると形勢は逆転した。
エースを封じ込められた状況を打開したのは、関田だった。ライト、ミドルの攻撃を織り交ぜることで鎮西ブロックを翻弄。ブロックが割れたところで、再び柳田にトスを送る。再び逆転した東洋が鎮西を引き離し、第2セットも制した。
第3セットは“柳田劇場”と言わんばかりに柳田が無双した。関田も「自分は上げたいところに上げていただけで、マサ(柳田)が決めてくれたおかげで勝てた」と振り返る活躍ぶりだった。
前年までであれば、2人の春高バレーがこれで終わり。だが、柳田が高校3年生になる年に「春高バレー」の開催時期を1月へ移行することが決定。2人には「連覇」という偉業を成し遂げるチャンスが訪れた。