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「オオタニは40本塁打30盗塁が基準では」米国人ドジャース番記者が開幕前に…大谷翔平は“予想以上”だった「ベッツを上回るためには過去の…」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNanae Suzuki
posted2024/12/27 17:03
前人未到の「50-50」を達成した大谷翔平。各記者の開幕前予想や序盤戦MVP展望はどのようなものだったか
一方で過去の実績も踏まえてか、盗塁数は「20~30」、打率も「.280台」という予想が多かった。実際、日本でもスタッツを詳細に分析するライター広尾晃氏は「打率.297 40本塁打116打点32盗塁」との成績予想だった。それらの予想を軽々と超えて「打率.310 54本塁打130打点59盗塁 OPS1.036」という破格の成績を残す辺りが、大谷翔平のスターたるゆえんと言える。
当初ベッツがMVP最有力、としていた看板記者は
<証言2>
大谷ならその可能性はあるんじゃないか。
(ケン・ローゼンタール/Number1099号 2024年6月27日発売)
◇解説◇
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大谷は自身にとって3度目、ア・リーグとナ・リーグ両方で史上2人目となるシーズンMVPを獲得した。さらに今年のMVPで着目されたのは、守備位置につかない「DH」というポジションで初となるMVPを獲得したことだ。
近年のメジャーリーグでは、MVPを選定する際に重要視する指標としてWins Above Replacement(WAR)というものがある。走塁、打撃、守備に投球とそれぞれの要素を総合的に評価して、チームに対するその選手の貢献度を示すものとして定着している。その中にあって守備評価では、そもそも守備につかないという点でDHが不利になりがち、という傾向だった。
それだけに、大谷がドジャース1年目でMVPを獲れるか否かは、シーズン前半戦の段階ではまだ識者によっても“五分五分”といったところだった。ローゼンタール氏は錬度の高いメディアとして知られる「ジ・アスレチック」の看板記者である。5月末時点に見解を聞いた際には、ドジャースの戦友であるベッツが新ポジションであるショートに挑戦しながら、打率も3割台をキープする活躍ぶりを踏まえて、背番号50を最有力候補として挙げていた。
ただしこんな風にも話している。
「大谷がベッツを上回るにはベッツの打撃成績だけでなく、自身の過去のベストシーズンを凌駕する必要がある」
ベストシーズンを凌駕する凄まじさ
しかしベッツは6月中旬、死球を浴びて左手を骨折して2カ月の戦線離脱を余儀なくされた。
さらにはフリーマンも家族の事情と度重なる負傷で戦列を離れる期間があり、MVPトリオで残されたのは大谷だけ、という状況になった。
そんな中で1番打者に入ってから本塁打だけでなく盗塁を量産。チームの得点能力をアップさせた。猛追する宿敵パドレスとのマッチレースを制し、ドジャースがナ西地区4連覇を果たし、リーグ最高勝率を挙げた。それは大谷が史上初の「50-50」を達成し、まさに「ベストシーズンを凌駕」したからこそで、事実として満票MVPに輝いた。
現地メディア「ロサンゼルス・タイムズ」のジャック・ハリス記者が執筆した特集記事によると、シーズン開幕前に数多くのメディアが集まったことで、チーム内では大谷加入についてすべてが歓迎というムードではなかったという。しかし勝利に追求する姿勢が同僚に認められ、ドジャースをけん引する存在となったのだった。〈大谷翔平の2024年プレーバック:つづく〉

