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田中碧はなぜ「ここぞ、という場面で点を取れるのか?」中村憲剛が感じた“あがき続ける才能”「三笘の1ミリ」からの得点に「やっぱりな、と」
text by
中村憲剛Kengo Nakamura
photograph byKaoru Watanabe / JMPA
posted2024/12/10 17:10
カタールW杯のスペイン戦で“三笘の1ミリ”から値千金のゴールを決めた田中碧
J1リーグデビューを飾ったのは、プロ2年目の9月。初先発は11月でした。出場機会が増えたのは3年目で、4年目は主力と言っていいプレータイムを記録しました。
あがいて、あがき続けて、自分の地位を確立していったのです。1、2年目に出られなかった時間を、マイナスではなくプラスに変えて努力し続けたことで活躍する下地を作り、出場機会をつかんでからはその下地に実戦経験を積み重ね、試行錯誤を繰り返しながら凄まじい勢いで成長していきました。
「ここぞ」という場面で点を取る男
それにプラスして、田中は「ここぞ」という試合や場面で点を取る男でした。
Jリーグ初ゴールは、初出場した北海道コンサドーレ札幌戦でした。84分に途中出場して、アディショナルタイムにネットを揺らしました。僕はこの試合に先発出場していたのですが、試合前から田中が「点が取りたい。取れる気がする」と話していたことを覚えています。
日本代表での初ゴールは、2021年10月のワールドカップ・カタール大会アジア最終予選のオーストラリア代表戦でした。チームはここまで1勝2敗と負け越していて、このホームゲームは絶対に落とせない試合でした。ここで、日本代表の森保一監督はシステムを4―2―3―1から4―3―3へ変更し、田中がスタメンに抜擢されました。
彼は直前の東京五輪に出場していましたが、フル代表としてプレーするのは19年12月以来でした。国際Aマッチ出場は3試合目で、最終予選初出場です。しかも試合の重要度はきわめて高い。緊張感に包まれてもおかしくないこの状況で、彼は先制ゴールをマークしたのです。
「自分がここで点を取る」というイメージ
ワールドカップ・カタール大会でも、グループステージのスペイン代表戦でゴールネットを揺らしています。「三笘の1ミリ」から田中が身体ごと押し込んだ得点は、スペイン代表撃破とグループステージ首位通過につながる歴史的な一撃となりました。