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「日本のファンが私を忘れずにいてくれた」プレミア12で日本を破り号泣…元ロッテの台湾代表左腕が歩んだ道「通訳なしで奮闘」「涙を流し帰国」
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梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byNanae Suzuki
posted2024/12/09 11:01
台湾代表の劇的な優勝に貢献した元ロッテ左腕のチェン
マリーンズの仲間に愛され、ファンに愛された。そしてチェンはマリーンズを愛していた。しかし、20年のシーズンを最後に帰国して母国台湾の野球のために尽くす道を選んだ。苦渋の選択だった。家族のことも考え、日本で学んだことを母国の野球発展のために還元したいという思いで、涙を流しながら帰国し、台湾プロ野球チームの楽天モンキーズに入団した。
台湾代表として果たした凱旋
そして今シーズンは、主にセットアッパーの役割を担い、54試合に登板。26ホールド、防御率1.97という成績をひっさげて台湾代表入りを果たし、プレミア12で“第二の故郷”でもある日本に凱旋。台湾の初優勝を導いたあの瞬間は、母国の野球発展のために尽くした日々が報われた至福の時だった。大きな夢の結実に、涙は自然と溢れた。
チェンは今でもマリーンズのニュースをチェックしているという。最後にこんなメッセージを残した。
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「マリーンズのすべてのことに関心を持っています。西野勇士投手とは長い間、チームメートで、今年、彼が素晴らしいシーズンであったことをとても嬉しく思います。これから勇士さんがチームメートと共に努力する気持ちを持って、チームをより良い成績に導いてくれることを願っています。また、今後、長い間、マリーンズが継続的に強いチームになると信じていて、ファンの皆さんも引き続きマリーンズを応援してください」
本拠地で流れるオリジナル曲
今でもマリーンズを愛するチェンの人柄が伝わる言葉だった。
チェンが台湾リーグの本拠地球場で登板する際、「チェンチェン大丈夫」のオリジナル曲が流れる。日本時代にファンに親しまれたフレーズが気に入っていた。そしていつでもどんな時でも笑顔で「大丈夫」と思える心を忘れないためでもある。
楽天モンキーズ関係者は「入団時にチェン投手への期待を込めて、専用の入場曲を作成しました。この曲は普段チームソングを作成している音楽会社に依頼して、軽やかなメロディでマリーンズ時代の決め台詞『チェンチェン大丈夫』を歌詞に入れ、活躍してほしいという願いが込められています」と教えてくれた。チェンがマウンドに上がると「チェンチェン大丈夫!」の掛け声がスタンド全体にこだまする。そこには台湾と日本を結ぶかけがえのない想いがあり、一生忘れる事のない友情がある。


