「恐る恐る見たら左腕がぶら下がっていて…」緊急搬送の大怪我から9カ月…ロッテ・本前郁也が歩む復活の道と「勇姿を見せたい」あの人への思い

　その瞬間、バキッという音がスタンドまではっきりと聞こえた。観衆はざわついた。マウンドの本前郁也投手は苦悶の表情を浮かべてマウンド上で、うずくまった。

「本当に腕がなくなったと…」

「ボクも投げてバキッという音が聞こえた。でも、なにが起きたか一瞬、分からなかった。無茶苦茶痛くて、一瞬は脱臼かなと思ったけど、もう腕がない感覚だった。本当にもう腕がなくなったという感じ。恐る恐る見たら左腕がベタッとぶら下がってブラブラしていた。これはヤバいぞと。腕を抱えるようにその場にうずくまりました」

　本前は当時を振り返る。

上腕部を押さえてうずくまる本前　©︎Chiba Lotte Marines

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救急車で緊急搬送

　それは今年2月20日、糸満で行われたイーグルスとの練習試合でのことだった。プロ5年目の本前は3回から2番手で登板した。4回に連打を浴びて無死一、二塁のピンチを作って打席に鈴木大地内野手を迎えた。

　プロ通算4勝。なんとかローテ入りをするべくアピールに燃えていた左腕は、思いきり腕を振った。その初球が大暴投となり、左腕を負傷した。上腕付近を押さえたまま、ベンチ裏に下がり、トレーナー室に向かった。脱臼ではなく骨折をしている可能性が高いという判断から救急車で病院に緊急搬送された。

「出来るだけ患部を動かないでいてください」

　救急隊員から指示された。

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