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「日本のファンが私を忘れずにいてくれた」プレミア12で日本を破り号泣…元ロッテの台湾代表左腕が歩んだ道「通訳なしで奮闘」「涙を流し帰国」
posted2024/12/09 11:01
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Nanae Suzuki
その瞬間、真っ先に目に入ったのは人目はばからず、顔をクシャクシャにして涙する一人の選手の顔だった。11月24日、東京ドームで行われた日本対台湾の2024 WBSCプレミア12の決勝。グラウンドでは勝利した台湾の歓喜の輪が広がっていた。その中でベテラン左腕が泣いていた。マリーンズファンにはお馴染みのチェン・グァンユウ (陳冠宇)投手。2015年から20年まで在籍していた台湾人投手だ。
流した涙の理由
マリーンズでは主に中継ぎで136試合に登板して通算11勝。どんな時でも「チェンチェン大丈夫!」と返事をすることでファンに親しまれていた。だからチェンのマリーンズ在籍時代を知るファンにはきっと、侍ジャパンの敗戦に悔しい思いを抱くと同時に、チェンが流した涙が印象に残ったはずだ。
少し時間が経ってから、台湾に帰国して身体を休めているチェンに、このことについて聞く機会があった。涙はどういう感情から浮かび上がったのか。率直にたずねてみた。
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「これまで日本のファンの皆様がずっと私を忘れずにいてくれて、本当に感謝しています。その気持ちを胸にマウンドに上がりました。東京ドームという日本の球場に戻ってマリーンズファンなど多くの日本の皆様の前で良いパフォーマンスを見せることができてとても嬉しいですし、思い出深い日本でいい結果になって嬉しかった」
15球…渾身の投球
日本代表との決勝では、4点リードの8回に登板。打者3人に対して2奪三振、15球で締める完璧な投球を披露した。雄叫びを上げ、ガッツポーズを見せベンチに戻っていった。
色々な思い出が走馬灯のように蘇ったマウンドだった。侍ジャパンのベンチには佐藤都志也捕手の姿もあった。1年だけではあったが、一緒に戦った。そしてよく話をした。
「佐藤選手とは2020年に何度かバッテリーを組みました。彼の配球戦略のおかげで何度も危機を乗り越えることができました。プライベートでも何度か一緒に食事に行きました。彼はシェアすることを厭わない良い後輩で、今年素晴らしい成績を収めたことを心から嬉しく存じます」とチェン。独特の言い回しで昔のチームメートを評した。