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「恐る恐る見たら左腕がぶら下がっていて…」緊急搬送の大怪我から9カ月…ロッテ・本前郁也が歩む復活の道と「勇姿を見せたい」あの人への思い
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2024/11/28 11:04
復活への道を歩みだした本前は、尊敬する和田にいつか勇姿を見せたいと誓う
ビリビリに破れたユニフォーム
患部を動かせないため緊急措置としてユニフォームを切られ、脱がされた。ビリビリに破れたユニフォームが事の重大さを物語っているように思えた。移動中、痛みはどんどん増していった。それでも指示通り、必死に患部が動かないように押さえ込み、病院にたどり着いた。
検査を受けた結果は左上腕骨骨幹部骨折。上腕骨(二の腕)にひねるような外力がかかることで起こるとされ、螺旋状の骨折線が入り、骨がねじれるように折れた状態だった。帰京し、その2日後には都内の病院で左上腕骨骨幹部のスクリュー固定術を行った。3時間ほどかかる大手術。抜糸から2、3カ月後、骨癒合が確認されるまで投球が出来ないという大怪我だった。
「皮膚の感覚すらない」壮絶なリハビリ
1カ月くらいは私生活にも影響があった。運転はもちろんできない。歯も利き腕では磨けない。シャワーを浴びるのにも一苦労だった。食事も利き腕ではない右手で必死に行った。苦労したのは書類を書く際。名前、住所を利き腕と反対の右手で書くのはなかなか時間がかかった。「器用になりましたよ」。心配する周囲に、あえて笑って応えてみせた。
「左腕に関しては皮膚の皮の感覚すらない感じ」
本前は当時をそう振り返る。ただ、しっかりと前を向いた。
かつては打球直撃で頭蓋骨骨折
北翔大学4年時には社会人チームとの練習試合で打球が頭を直撃し頭蓋骨骨折。そのまま救急車で病院の集中治療室に運ばれたことがあった。
「今回のことはもちろん大変なことではあったのですが、あれに比べると怖さはなかった。プロに入る前に頭に打球が当たって集中治療室に運ばれた。意識もほとんどなくて、それ以上のことはないと思っている。一時は記憶力も落ちて、しゃべることができなかったくらい。あそこから復帰して病室でプロ志望届を書いてこうやってプロの世界に入れて、今がある。それに比べると怖くはない。思い切り腕を振って投げる事に関してもボクには怖いという感覚はない」