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「正直、少し迷いました。でも…」ドラフト指名123人“最後の指名選手”の胸の内…「野球は中学から」「投手歴2年」ソフトバンク育成13位が期す下剋上
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/11/23 06:00
ドラフト指名123人“最後の指名選手”となったソフトバンク育成13位の門前高校・塩士暖投手。そのリアルな胸の内は…?
育成13位…指名後は「少し迷いがありました」
「プロ野球選手は野球をやっている以上、誰もが憧れる世界なので、挑戦してみようと思いました。自分は支配下で指名されるようなレベルとは思っていなかったので、どこかで呼ばれたら、というくらいの思いでした。ただ……いざ名前を呼ばれた後、正直に言うと少し迷いがありました。本当に自分は通用するのか不安になって。大学に進んで、細い身体をもっと大きくした方がいいとも思ったんです」
成長を遂げられた実感はあったとしても、自分が目にしたことのない範囲にはもっとすごい投手はたくさんいる。その中で勝負していけるのか。少しだけ心がぐらついたのだ。
ドラフト後、悩みに悩み抜いたが指名に対して少しずつ前を向けるようになった。
「それでも指名していただいたのはそうそうないチャンス。だからこそ挑戦した方がいいと思うようになりました」
11月14日に指名あいさつを受け、プロ野球選手になる実感を徐々に噛みしめながら現役選手に混じって練習に励む日々を送る。
「ボールの質を強くすることが一番ですが、プロで通用するために身体をもっと太くしたいです。自分は輪島市に育ててもらって、門前高校に進んでプロに行けるまで成長させてもらいました。地元はまだ元気のない方もおられるので、自分が活躍して明るくできたらいいなと思っています」
育成選手からのスタートは厳しいことは覚悟している。
まずは支配下登録を目指すことになるが、同じ育成選手から這い上がり、日本を代表するピッチャーとなった千賀滉大投手(メッツ)に憧れを抱く。
「自分はコントロールの良さにも自信を持っています。千賀さんのようなピッチャーになることが目標ですが、まずは先発ローテーションを守れるピッチャーになりたいです」
間もなく能登半島地震から1年を迎える。123番目の選手からトップの選手へ。自身の勇姿が故郷を明るく照らす存在となれる日を信じ、厳しい世界への扉をいよいよ開く。