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「正直、少し迷いました。でも…」ドラフト指名123人“最後の指名選手”の胸の内…「野球は中学から」「投手歴2年」ソフトバンク育成13位が期す下剋上
posted2024/11/23 06:00
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Fumi Sawai
17時前から始まったドラフト会議。最初は教室にいた3年生全員に、練習を終えた1、2年生も加わり野球部員全員で、その時を待ち続けた。「塩士暖」の名前が響き渡ったのは、辺りも真っ暗になった夜8時半を過ぎた頃だった。その瞬間、教室は歓声と拍手に包まれた。
「全員で、たぶん3時間以上は待っていたと思います。正直、本当に指名されると思っていなかったんです。でも……チームメイトみんなが一緒に待ってくれている中で、名前が呼ばれなかったら申し訳ないなと。ただただ願うだけでした。呼ばれた瞬間は言葉が出なくて、喜びよりも驚きの方が大きかったです。自分よりも喜んでくれた人もいたので嬉しかったです」
ドラフト指名123選手中「最後の指名」
名前を呼ばれたのは指名選手の中で最後となる123番目だった。185cm、75kgのすらりとした体型から今夏の県大会前の練習試合でストレートが最速145キロをマークした伸び盛りの本格派右腕だ。
門前高校では1年春からベンチ入りしたが「1年上の先輩が9人しかいなかったので……」と本人は謙遜する。中学時代は輪島中の軟式野球部に所属し、当時は外野手だった。ただ、野球を本格的に始めたのは中学校に入ってからで、小学校までは陸上部に所属し、短距離走などで磨いてきた快足を売りにしてきた。
高校で投手に転向したのは門前高校OBで星稜の監督として甲子園で通算22勝を挙げ、現在はアドバイザーを務める山下智茂氏からの勧めだった。
「最初に山下先生から投げてみろと言われて。それからピッチャー転向を勧められました。個人的にはピッチャーはやってみたかったですし、肩には元々自信があったので、最初は投げるだけでも楽しかったです」
だが、実戦登板が増え、経験を積んでいくうちに投げることへの責任を感じるようになる。