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「タケ・クボはバルサにも通用するよ」子供の予言通り…MVP久保建英「ソシエダで一番の試合かも。大事なのは明日、この街で…」覚醒の全事実
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2024/11/12 17:01
バルサを文字通り攻守両面で翻弄した久保建英。日本代表合流前、納得のMVPだった
たしかに今季のバルサのサッカーには、見るものを魅了する力がある。そしてスター揃いのバルサの攻撃を牽引するのが、ヤマルである。左利きの17歳は、相手に触れさせる隙さえ与えないドリブルだけでなく、相手が予想できないコースへパスを通すなど、アシスト数7を数えている。
そのヤマルはスタジアムにこそ姿を見せたが、負傷離脱によりベンチ入りすることもなかった。左利きが右サイドでプレーする点では、久保との共通項があり、共演の撮影が楽しみだったが、ホームで1勝しか挙げることができていないホームチームにとっては、ヤマル不在は1つ目の幸運だったといえる。
レバンドフスキの“不条理オフサイド”はソシエダの幸運に
ゲームは序盤、バルサが支配する形でスタートする。
13分、ソシエダはゴール前でのミスを相手エースのロベルト・レバンドフスキに押し込まれてしまう。格上相手の失点に、思わず肩を落とし落胆を露わにするメンバーの姿が撮影できた。
VARの結果、オフサイドによってゴールが取り消されたが、試合後の分析では、レバンドフスキのはみ出していたとされる爪先部分が“実は守備側選手のものである”可能性が高く、VARの判定自体が誤りだった可能性が高い。
ホームチームの落胆ぶり、バルサの好調さを考えると、バルサの先制点が試合に与える影響力は大きかったはずで、この判定が2つ目のソシエダの幸運となった。
ゴールが取り消された直後のこと。久保はディフェンスリーダーのイゴール・スベルディアの元へ近寄ると、自身の胸に手を当てて「オレに任せろ」というようなジェスチャーで気概を見せている。そしてここからスイッチが入ったような久保を中心とソシエダの攻撃が一気に活性化する。
サイドでパスを受けると、マークにつくイニゴ・マルティネスを置き去りにするドリブルからクロスを送りチャンスを演出した。さらに直後にも、ブライス・メンデスとのコンビネーションで右サイドを制圧。カットインでボックス内へ侵入すると、2人をかわしシュートまで持ち込んでいる。放った低弾道のシュートは枠を捉えたが、GKのセーブにあった。
まさにほぞを噛む代わりとでもいうように、シャツの裾を噛み、悔しさを露わにした。
久保の前プレスにバルサ守備陣は慌てた
ただ久保の勢いは明らかに、選手、ファンに伝播しスタジアムの雰囲気を変え、先制点の舞台が整えられつつあった。
前半33分、相手GKのミドルパスを弾き返すと、シェラルド・ベッカーが守備ラインの裏に流れたボールに反応し、冷静にゴールへ流し込み先制点を奪った。ゴールを決めて大喜びするベッカーと共に、逆サイドから猛然と駆け寄る久保の姿も印象的なセレブレーションとなった。
久保の躍動は攻撃面だけに限らず、守備面でも出色の出来だった。