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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
清原正吾はなぜ“指名見送り”だったのか? あるスカウトの本音「本当に力のあるバッターだったら…」 2024年《運命のドラフト会議》その後の物語
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byShigeki Yamamoto
posted2024/11/05 06:02
注目を集めた清原正吾選手も最後まで名前が呼ばれることはなかった。スカウトが考えるその理由の一端は…?
國學院大からも、シャピロ・マシュー・一郎投手(193cm103kg・右投右打・國學院栃木高)と、打線の中枢をつとめてきた柳舘憲吾内野手(180cm87kg・右投左打・日大三高)の2選手が指名見送りになっていた。
「シャピロは、独立(リーグ)にお世話になると思います。リーグ戦で使った時に、コントロール不安を見せてしまったのが痛かった。高校3年で時間が足りない、大学4年でも時間が足りない。150キロ近いボールを投げられる大器ですけど、なにぶん未完ですから。独立が合っていると思います」
明るく、先だけを見ている話に救われる。
監督「2年後に絶対チャンスが来るって、信じています」
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大学野球の監督さんも、この時期、お世話になっている高校監督への挨拶と、再来年の春に入学予定の高校2年生の様子を確かめに、球場に足を運ぶ。
「柳舘にも、いくつか声をかけてくれた球団はあったんですが……。でも、幸い社会人に進めますし、彼のここ一番で『バチーン!』といける勝負根性は誰にも負けてないですし、2年後に絶対チャンスが来るって、私、信じていますから」
大学の4年間は長い。いろいろあったはずの20歳前後のその長い時間、同じ空間を共有してきた指導者に、信頼されて社会人球界に送り出される。
それもまた、あまり報じられない「裏ドラフト」の一面であろう。
「ドラフト指名漏れ」という悲しい言葉が使われているが、惜しくも指名を逸した選手たちは、決して「実力不足」がその理由だと考えてほしくない。
投手の仕事は打者のタイミングを外すことであり、打者の仕事は投球にタイミングを合わせることである。同様に、人生で大切なのも「タイミング」である。
今回の指名見送りは、「君はまだちょっと早いんだよ」……プロ側からのそうしたメッセージであると考えるのが、現実にいちばん近いであろう。足りないのは実力ではなく、「精進の量」なのだ。
毎年、アフター・ドラフトで見聞きされる悲喜こもごものあれこれ。
「2024ドラフト」指名見送りの選手たちのこの先に幸多からんことを、心からお祈りしている。