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「これで、終わったと思った」巨人・梶谷隆幸(36歳)が引退で振り返る“気持ちが切れた”瞬間とは?…同期入団の親友に語った「坂本勇人からの言葉」
text by
高森勇旗Yuki Takamori
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/11/03 11:02
18年間のプロ生活を終えた巨人の梶谷隆幸。引退決断の決定的瞬間はどんな時だったのか。また、同い年の盟友・坂本勇人がかけた言葉は?
「徐々に体が動くようになって、バッティングを開始したら、やっぱり野球めちゃくちゃ楽しいなって。YouTubeでいろんなバッティング理論を勉強して、毎日それを試したくなって。試合に復帰したら、あれもこれも試してみたい。とにかく、毎日が楽しくてしょうがない」
腰、膝の手術を経て、長いリハビリが明け、ようやくグラウンドに放たれた梶谷は躍動した。それでも、膝の状態は日によって大きく変わった。全く痛くない日もあれば、歩けないほど痛い日もある。体は、自分ではコントロールできない状態だった。
「思い切り投げようと思っても、肩が思っているほど動いてくれない。自分が投げたボールを見ると、寂しい気持ちになるくらいボールに力がない。腰も、日によって状態が違うし、膝に至っては自分の膝じゃないものがついている感覚。それでも、この体でやっていくしかない。この可動域で、この筋肉の出力で、この違和感の中で、今できる最高のパフォーマンスを出すしかない。万全な状態でプレーすることは、もうない」
それでも、この体で勝負するしかない
2014年には盗塁王を取ったほどの男である。思うように動かない体を受け入れるには時間がかかったであろう。淡々と語る言葉に感情が乗ってこないのは、現実と向き合った時間の長さを表している。この体で勝負するしかない。万全ならば、という言い訳や理想論は、リハビリ期間に全て汗と一緒に流れていった。そんな体でも、二軍では別格の数字を残し、まだ守備につけるかどうかもままならない中で、一軍へと招集される。体の状態は一向に不安定であったが、それでも2023年シーズンは102試合に出場し、打率.275を記録した。
「代打の準備をしているとき、どんな展開だろうが、誰が相手だろうが、『絶対に俺に声がかかれ』と思って待っていた。正直、キツい展開で使われる場面も何度もあった。でも、一瞬でも気持ちが引けてはいけない。結果の責任を取るのは常に自分。絶対に言い訳をしない。絶対に不満を口にしない。与えられた場面で、全力のプレーをする。それだけは、やり抜くと決めていた」