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「監督、これ1位あるよ」記者はささやいた…ソフトバンクドラフト1位・村上泰斗はなぜ甲子園出場なしで“高校最強右腕”今朝丸裕喜の阪神2位を上回ったか
text by
井上幸太Kota Inoue
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/02 17:01
ソフトバンクの1位指名を受け、小久保監督と王会長のサインボールを掲げる村上
「聞かれるのは『指名された球団の印象』『憧れている選手と対戦したい選手』とかやで、と伝えてました。東は放っておくと何を話すかわからんかったので、7年前は調査書をもらった球団ごとに『ここに指名されたら、印象はこうで、憧れはこの人って言えよ!』と、“一問一答集”を作ったんですけど(笑)、村上は本人に任せました。憧れの選手と聞かれたときはずっと藤川投手と言ってきて、突然変えるのも変なので、よかったんじゃないですかね」
ドラフト前に取材をしたときも、来季から阪神の監督を務める藤川球児への憧れを口にしていた。現役最盛期をリアルタイムで見ている年代ではないが、2006年のオールスターで繰り広げた、アレックス・カブレラ(当時西武)との伝説の力勝負は、動画サイトで繰り返し見たとキラキラした目で語ってくれた。
当日にとったポーズ写真を見返すと、藤川と同じく、人差し指と中指の間隔が狭い直球の握りで、ボールを持っている。
村上にとってのターニングポイントは、大きく分けて2つあると感じる。
一つは、知名度を急上昇させた、2年生夏前の152キロの計測。そして、もう一つが、3年生への進級直前に行われた報徳学園との練習試合だ。
阪神2位・今朝丸裕喜との対決
対外試合が解禁された3月上旬の練習試合で、同じ兵庫のドラフト候補として注目を集めていた今朝丸裕喜との投げ合いが実現。スカウト、メディアが大挙した一戦で、村上は投げ負けた。
「球速こそ、村上が149で、今朝丸くんが147やったかな。でも、ピッチャーとしての差はえらい出たなと思ったんです。“勝てるピッチャー”という点では、今朝丸くんにものすごく差をつけられた。村上に『このままじゃ勝てんぞ』と言うたのを覚えてます」
2年冬に進路を「プロ一本」に定めていたが、この試合の直後から「3位以上でプロに行く」と目標を上方修正した。