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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「全国放送もあるんだぞ!」ヤクルト2位指名ドラフト裏側に密着…モイセエフ・ニキータを“高校屈指のスラッガー”に育てたロシア出身の父の言葉
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byNumberWeb
posted2024/10/28 17:40
ヤクルトから2位指名を受けたモイセエフ・ニキータ(ドラフト前日に撮影)
「プロでもしダメだったら、と本人が少しでも不安に思っているのなら、大学進学がいいと思う。でも、本気でプロとして勝負したいと思っているのなら、家族としてそれを尊重してあげたい。もしうまくいかなかったら、そのときはそのときで頑張るしかないから」
愛知県内のメーカーに勤めるセルゲイさんは、仕事が終わったあとも夜遅くまで息子たちの練習に付き合った。ロシア出身で野球の知識はほとんどなかったが、60冊以上の野球関係の書籍を読み込み、変化球まで修得した。セルゲイさんはこう話す。
「大した苦労じゃないです。練習は楽しかったし、むしろいいストレス解消でしたよ(笑)。本当に大変だったのはお母さん(妻のアンナさん)。ずっと小さな弟たち(3男のアルチョームくんと4男のキリルくん)の面倒を見ていましたから。周りの方にもすごく助けてもらいました」
「いじめられたことも、いやな思いをしたこともないので」
これまでにも多くの取材を受けているはずのモイセエフは、何度同じ質問をされても「両親への感謝」を真摯に語る。ドラフト前日のインタビューで「指名されたあと、まっさきに思いを伝えたい人」を問うと、淀みなくこう話した。
「やっぱり一番は両親です。大変な時期もあったと思いますけど、子どものころから支えてくれましたし、ずっと近くで見てきてくれた。本当に感謝しています」
ロシアにルーツを持ち、見た目や名前の違いで苦労したことはなかったのか。踏み込んだ質問にも、まっすぐ視線を合わせて答えてくれた。
「いじめられたことも、いやな思いをしたこともないので。目立つのもぜんぜん悪い気はしないですね。両親をはじめ、周りの人たちに恵まれていたと思います」
そんな家族の夢が、ついに叶うかもしれない。一瞬、取材者としての立場を忘れて「明日、いい結果が出ることを願ってます」と言葉をかけると、17歳のモイセエフは「はい!」とさわやかに微笑んだ。
<「ドラフト当日編」に続く>