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「うん、この感じだな…」アクシデントで緊急登板も「スッと試合に入っていけた」DeNA7年ぶりの日本シリーズ進出には山崎康晃の経験が必要だ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2024/10/15 17:17
CSファーストシテージで好リリーフをみせたDeNAの山崎康晃(32歳)。7年前の日本シリーズや侍ジャパンでプレーしたベテランの経験が必要になる
「外野を守っていても感じることなんですけど、ポストシーズンってやっぱり普段とはちょっと違うムードがあって、球場の雰囲気とかもいつもとはガラッと変わる」
こう説明したのは筒香だった。
「特に甲子園(球場)はロッカーからブルペンまで、全くそういう雰囲気に触れずに、いきなりマウンドに上がることになってしまうんです」
甲子園球場のビジターブルペンは三塁側アルプススタンドの下にある。ロッカーからはスタンド下の廊下を通って行き着く。その間はほとんどグラウンドの声援も聞こえず、外界とは閉ざされた中で準備をすることになる。黙々と投球練習をして、出番の指名を受けたらリリーフカーに乗って、グラウンドに飛び出していくが、そこで初めてあの阪神ファンの応援に揉まれる訳だ。
「ブルペンに行く前にベンチに入って、空気を感じてからブルペンに行くことで、非常にいい心と体の準備ができている。後半戦から続けているルーティンが改めて大事だなと思いました」
提案した山崎自身も、もちろんベンチで久々のCSの空気に触れてからこの日もブルペンに入った。そして東のアクシデントが起ると同時に、ボールを握って準備を始めたのだ。
「入り方が難しいですし、多分彼が一番CSの経験がある」
こう語ったベンチの大原慎司投手コーチから指名を受けて、山崎はリリーフカーに乗り込んだ。東の交代を告げるアナウンスに球場はざわめき、阪神ファンのボルテージも一段、上がったように感じた。
「うん、この感じだなというのかな……スタンドの応援もそんなに気にならずに、スッと試合に入っていけました」
こう語った山崎は5回、先頭の木浪聖也内野手を148kmの真っ直ぐで空振り三振、続く代打の糸原健斗内野手には10球粘られたが、最後は147kmで遊ゴロに打ちとり、1番の近本光司外野手も3球で二ゴロに仕留めて三者凡退でベンチに帰ってきた。
エースの緊急降板というアクシデントにもつけ入るスキさえ作らせなかった。ベイスターズの流れを、しっかり守って後続のリリーフ陣にバトンを渡した。
投手陣でCS経験者は2人だけ
山崎から佐々木千隼投手、坂本裕哉投手がそれぞれ1回を無安打リレー。8回にマウンドに上がったセットアッパーの伊勢大夢投手も、1安打は許したが無失点でクローザーの森原康平投手にバトンは渡った。