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「天才リベロが経験した2度目の落選」男子バレー小川智大(28歳)が初めて明かす、“号泣の夜”の真相「止まらなくて…自分でもびっくりした」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World
posted2024/10/10 11:04
パリ五輪のコートに立てなかったリベロ小川智大(28歳)。悔しい想いを抱きながらも、チームに同行することを選んだ
日本代表への注目度の高さも相まって、2人が平等に出場したネーションズリーグ期間中は、「リベロのポジション争いが熾烈」という記事がたくさん出た。見えないプレッシャーが、それまで鉄壁の守護神として君臨してきた山本にものしかかっていた。
ボールのインアウトのジャッジやレシーブの返球、これまでにはなかったズレが相次ぐ。そんな山本を誰より気遣っていたのが小川だった。
「試合に出ること自体は楽しかったですけど、僕もプレッシャーがめっちゃありました。相手がフローターサーブの時に隣の選手をカバーして(守備範囲を)広げて崩された時とか、『ここで崩されたことがメンバー選考に関係するかもしれない』と試合後に考えることもあった。だからトモさんにもタイムアウト中からずっと話しかけて『マジで気にしないほうがいい』って、ずっと言い続けていました」
「やることはやった」迎えた運命の夜
世界最高のリベロが2人いる。だが、五輪に出場できるのは1人。6月23日、フィリピンラウンドを終えた夜、ミーティングで12名が発表された。
やることはやった。小川は必死で祈った。
選ばれてくれ、と。
ポジションごとに名前が呼ばれる中、最後に、ブランはリベロに山本の名を挙げた。
誰も声を発することなく、沈黙が支配する。
俺が悔しさを出したら、選ばれたメンバーが喜べない。しかし、感情を抑えようとしたが、溢れる涙は止められなかった。必死で噛み殺そうと踏ん張っても、嗚咽が漏れて止まらなかった。
「選ばれた側からすれば、そんな姿を見たら気を遣うじゃないですか。だから絶対に嫌だったし、見せたくなかった。でも止まらなくて。自分でもびっくりしました」
〈後編につづく〉