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「天才リベロが経験した2度目の落選」男子バレー小川智大(28歳)が初めて明かす、“号泣の夜”の真相「止まらなくて…自分でもびっくりした」
posted2024/10/10 11:04
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Volleyball World
悔しい思いを味わったのは、選ばれた12名の選手だけではない。「世界一のリベロ」と称されながらも、悲願のオリンピック出場を逃した小川智大(28歳/ジェイテクトSTINGS愛知)。なぜパリに残ったのか、なぜ最後のコートで涙を見せなかったのか。SVリーグ開幕直前、本人がすべてを明かした。【NumberWebノンフィクション全4回の3回目/小川智大の後編、富田将馬編、エバデダン・ラリー編も公開中】
2019年から5シーズン在籍したウルフドッグス名古屋から、同じ愛知を拠点とするジェイテクトSTINGS愛知へ。小川智大はSVリーグ元年を、新たなチームで迎える。
開幕が近づく中での練習日、午前練習を終えてTシャツ姿で取材の場に現れる。「やばいですよ、みんなすごいっす」と言いながら、小川は楽しそうだった。
「TJ(アメリカ代表のトリー・デファルコ)、めちゃくちゃヤンチャなんですよ。お前そこは絶対笑っちゃダメなとこだろ、と思うところでずーっと笑っている。失礼なヤツで、面白いんです」
絶対泣かない男が流した涙
抜群のコミュニケーション力はどこに行っても変わらない。誰に対しても物怖じしない愛されキャラで、直前までふざけていたかと思えば、練習になると表情が変わり、難しいプレーも簡単そうにこなしてみせる。
「バレーだけは、嘘つけないです。僕の人生で、なくなったらおしまいなので」
小学3年から始めたバレーボール。幼少期は厳しい練習に「365日中、250日は泣いていた」と笑う。泣き虫なのは自認しているが、大人になった今は違う。人前で泣くのは絶対に嫌だから、泣かないと決めていた。ただ、唯一、あの夜をのぞいては――。