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「天才リベロが経験した2度目の落選」男子バレー小川智大(28歳)が初めて明かす、“号泣の夜”の真相「止まらなくて…自分でもびっくりした」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byVolleyball World
posted2024/10/10 11:04
パリ五輪のコートに立てなかったリベロ小川智大(28歳)。悔しい想いを抱きながらも、チームに同行することを選んだ
2021年、日本代表に初選出された時から、五輪出場は小川にとって大きな夢だった。
最初のチャンスは東京五輪。Vリーグのベストリベロを受賞し、サーブレシーブやコート内での統率力には定評があった。パリ五輪直前のネーションズリーグでも、当時から日本代表で圧倒的な存在感を残した山本智大と共に、小川も日本のリベロがいかにハイレベルであるかを世界に見せつけた。
だが、14名がベンチ入りできる世界選手権やネーションズリーグといった主要国際大会に対し、五輪は12名。リザーブの1名を加えても13名に限られ、リベロが2名選ばれるケースはほぼない。直前の国際大会でアピールした小川の思いは届かず東京五輪は落選したが、その時は「落ち込むこともなかった」と振り返る。
「東京(五輪)で外れた瞬間、すぐ『パリだ』って。だから全然、あの時はすぐ気持ちが前を向いていました」
“2人”にしかわらかないことがある
東京五輪直前の合宿まで練習に同行し、直後のアジア選手権にも出場した。フィリップ・ブランがコーチから監督に代わり、パリ五輪に向け本格的に始動した2022年から小川と山本が日本のリベロとして定位置を争う。それまで以上にハイレベルな争いを繰り広げてきた。言い方を変えれば、他の追随を許さないほど、2人の存在がずば抜けていた。
2022年世界選手権から翌年のネーションズリーグ、そして五輪予選も日本のリベロは山本と小川が選ばれた。山本は事あるごとに「小川がいるから自分を高められる」と述べ、小川も山本がいかにすごいリベロであるかを語る。「2人にしかわからない特別な関係」の守護神たちは、切磋琢磨しながらパリ五輪を目指した。