炎の一筆入魂BACK NUMBER
「悔いなく終われた」先発一筋13年でついに引退を迎えたカープ野村祐輔の信念と、後輩たちが語った凄み《デビュー以来211試合連続先発登板》
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/10/08 11:04
10月5日の試合後の引退セレモニーで、野村はファンに最後の挨拶をしながらグラウンドを回った
こだわり続けた球の強さを生み出すフォーム、精密な制球力を発揮したフォームの再現性が納得できるレベルに達しなくなった。ともに汗を流してきた若手投手に後を託すように、潔くユニホームを脱ぐ決断をした。
引退試合となった10月5日のヤクルト戦、現役最後の試合前の調整で、後輩たちは奪い合うように代わる代わるキャッチボールの相手を務めた。
入団時から背中を見てきた大瀬良は寂しさと、変わらぬ頼もしさを口にした。
「引退される人の球じゃないなと。まだまだできそうなのになと思いながらキャッチボールをさせてもらった。(自分の)グローブが動かないですし、代名詞とも言えるコントロールは素晴らしいなと。寂しさを感じながら、いろんな思いで受けさせてもらった」
最後まで貫いた投球スタイル
現役最後の登板でも、両サイドを徹底するスタイルを貫いた。1イニングに21球要したのも、野村らしい登板だったとも言える。
最多安打のタイトルを狙う1番・長岡秀樹には、フルカウントから直球をセンターにはじき返されるも、続く並木秀尊を再びフルカウントから二ゴロに打ち取った。続く丸山和郁は直球で追い込んでチェンジアップで空振り三振に切り、最後は村上宗隆も直球2球で追い込み、3球目のチェンジアップで空を切らせた。
「村上選手が三振してくれたので、感謝です」
真剣勝負から身を引くことを実感したような笑顔だった。
「悔いなく、終われたと思います」
13年連続で一軍登板を果たし、16〜18年のリーグ3連覇に貢献。個人タイトルも獲得した。デビューから211試合連続先発登板は公式には残らずとも日本記録だ。プロの第一歩を踏み出した12年1月11日の入寮から4652日、先発としてすべてを注いできたからこそ、胸を張ってグラブを置ける。