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プロ通算2700安打超…“希代のヒットメイカー”青木宣親がこだわる「数字」とは? “熱烈なヤクルトファン”尾崎世界観との対話で明かしたこと 

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青木宣親×尾崎世界観

青木宣親×尾崎世界観Norichika Aaoki & Sekaikan Ozaki

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photograph byMiki Fukano

posted2024/09/12 11:05

プロ通算2700安打超…“希代のヒットメイカー”青木宣親がこだわる「数字」とは? “熱烈なヤクルトファン”尾崎世界観との対話で明かしたこと<Number Web> photograph by Miki Fukano

偉大なヒットメイカー・ヤクルトの青木宣親(左)と大のスワローズファンでミュージシャン・作家の尾崎世界観の異色対話『青木世界観』が実現した

 ただ「3割」については、今となっては正直、こだわる必要がない時代になっていますよね。野球のデータ解析がどんどん進んで、ここ10年で急速に色々な数字が出てきました。バッターに関してはOPS(出塁率+長打率で表される数値で、チームの得点への貢献度を表す)や、WAR(セイバーメトリクスで打撃、走塁、守備、投球などを総合的に評価する数値で、同じポジションの代替可能な選手と比較してどれだけ勝利に貢献したかを表す)などが重要視されるようになっています。

「数値」という意味では、打球速度や打球角度などの指標もある。特にMLBでは、長打を求める上でそういった数値が結果に通じると言われています。ピッチャーで言えば、昔からある球速のみならず、球の回転数の数値やホップ率という数値もある。

 どれくらい数値が出ているか、ということが契約内容に関わってくる現実もあったりして、野球界の中で数字の価値は急速に変わっているように思います。

「3割」に関して言えば、100打席立って30本ヒットを打てるのと29本なのと、1本しか違わないのに評価が変わるというのもおかしな話ですよね。500打席でもその差はたった5本ですから、実際には大して変わらないでしょう(笑)。

年俸に「3割」が影響することも…

 でも、「3割」って凄く聞こえがいいんですよね。ピッチャーの「10勝」も同じかもしれない。先発、中継ぎ、抑えと分業制の時代で、100球で7回までいけばもう御の字。その後に出てくるピッチャーが打たれたら勝ちはつかないわけですから。勝利数は時の運でもあります。

 二桁に到達するに越したことはないけれど、実はあまり大差がない。ただ、日本で はキリのいい数字は見栄えがいいということなのか、プロ野球でもまだ「3割」や「10勝」にこだわるようなところは残っています。

 実際に年俸に「3割」が影響することって、未だにあるんですよ。球団側の査定だけでなく、選手の方から「3割打ったんだから」と交渉材料にすることもある。だから今でもシーズン終盤でチームの順位が確定していたりすると、その時点で3割に到達している選手が数字をキープするために試合に出なくなる、ということもあるわけです。

 メジャーリーグでは、僕がいた当時でも「3割」に付加価値は全くありませんでした。打率2割8分ならもうバッチリで、さらに長打があるとか、OPSが高いという選手が評価されていました。結局、選手は求められるものに到達しようとするので、数字の価値が変わっていけば今後は「3割」とか「10勝」を目標に掲げる選手はいなくなるかもしれません。

打球速度や回転数を意識

 実際に今の若い子たちを見ていると、すでに自分の目指す基準を別のところに置いている選手は多いと思います。将来メジャーに挑戦したい選手にとって、MLB球団のスカウトからの評価という意味でもOPSやWARなどの数字は意識していますよね。

【次ページ】 打球速度や回転数を意識

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