Number ExBACK NUMBER
「1億もらってもおかしくない」“ヤクルト入団2年目で200安打”青木宣親が契約交渉で“ハッタリ”をかましたワケ「だって僕、イチローさんですよ」
posted2024/09/12 11:07
text by
青木宣親×尾崎世界観Norichika Aaoki & Sekaikan Ozaki
photograph by
JIJI PRESS / Miki Fukano
初の契約更新で「現状維持」と言われ…
僕は数字は絶対に追い求めるべきだと思います。可能なら全ての数字を上げた方がいいわけだし、さっき出た「3割」の話だって、「2割9分」よりは「3割」の方がいいし、「3割」より「3割1分」の方がさらにいい。
もちろん、数字にこだわらないという選手がいるのも分かります。自分の中で何か別のところに指標があって、それ以外のところに目を向けないようにする、という考え方もあるでしょう。それは理解した上で、でもやはりプロとしては、目に見える数字を上げていくことが、自分をより引き上げていく、というのは単純に分かりやすいし、数字には逃げずに向き合うべきだという思いがあります。
成績以外では、「金額」という評価もありますよね。プロ野球では毎年オフに契約更改があって、報道では「推定」という形ではあるけれど、それぞれの選手の年俸が はっきりと分かる。これは「安打数」とか「打率」とか絶対的な評価だけではなく、球団から見てどれだけこの選手が必要か、という評価でもあります。
最近は事前に下交渉をしていて、契約更改として表に出てくる日はサインをするだけ、という形になっていますが、以前は「保留」とか「越年」なんていうこともよくありました。もちろん、今でも実際には下交渉を3回、4回、5回と重ねるケースもあるので、実際には1発でサインしているわけではないんですけどね。
僕のことで言えば、プロに入って最初の年俸は1000万円スタートでした。1年目は二軍でしたが打率.372打ったんです。その年のオフ、初めての契約更改では「現状維持」と言われて......思わず「ちょっとだけでもダメですか?」って(笑)。
ハッタリで「1億もらってもおかしくない」
でも「ファームでいくら結果出したってダメなんだよ。お前は即戦力として期待しているわけだから」と。納得ですよね。確かにそれもそうだ、プロは一軍で結果を出してこそナンボだ、と。 ただそこで「じゃあ来年、一軍で活躍したらその時は上げてくださいよ」、「おう、分かった」って、そんな会話をしていたんです。それで次の年、一軍で202安打ですよ。よし、1回目の交渉では絶対にハンコなんて押さないぞ、と意気込んで契約更改に臨みました。予定通りに保留したら、編成の方は「あれ、お前なんで押さないんだ?」って驚いていました。