試合後の会見では、今シーズンよりマジョルカの指揮を取るハゴバ・アラサテ監督が、この試合好調だった新加入のモヒカに関しての質問に対して、「モヒカと共にタク（浅野）、新加入の2人が今日は特別に良かった」と、自ら浅野に言及している。

　とはいえ、引き分けに結びついた浅野の活躍は、試合前の想像とはまた違うものだった。

キックオフ前の練習からマドリーの質は極上だった

　キックオフ前にさかのぼる。アップではアウェイのピッチながら白いユニホームを纏った選手たちの一挙手一投足に視線が集まるのが、手に取るように分かった。

　目の前では、ビニシウスがクサビのパスをベリンガムへ入れると、ワンタッチで落としたボールにエムバペが走り込み、ゴールへ鋭いシュートを突き刺す。いやが上でもクオリティーの高さを突きつけられる。

　選手入場前になると、ピッチ脇では悪魔に扮したダンサー達の炎を使ったパフォーマンスが場を盛り上げた。そして昨季チャンピオンを讃えるように、マジョルカイレブンの間を通ってマドリーイレブンが入場してくる。

　両者の挨拶が終わり、各々のポジションへ選手が散る際には、浅野とマジョルカの攻撃の起点となるセルジ・ダルデルが話し合う姿があった。

　キックオフ直前には、マジョルカの右最前線に位置取った浅野が目を閉じ、両手を合わせつつ集中力を高める姿を、TVカメラが密着して映していた。

　キックオフ。ホームチームが優位にゲームに入ったように感じられた。

　浅野がサイドから中央へボールを要求しながら走り込んだ。プレシーズンには、ダルデルからのロングパスを受けゴールを決めている。ただ相対する相手左サイドバックのメンディがしっかりと並走すると、浅野の動きを囮に空いたスペースへSBのマフェオが走り込み攻撃の形を作った。

エムバペにベリンガム、ビニシウスとロドリゴで先制点

自陣から敵陣まで、相手マークを振り払うような独走を見せたエムバペ

　アウェイチームが様子を見ていただけかもしれない。

　そう感じたのは……5分を過ぎたあたりから徐々に白ユニホームのボール保持率が高まってきたからだ。

【次ページ】　浅野の俊足プレスと、クルトワを慌てさせたシュート