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同い年の大谷翔平に「すいません、写真撮ってもらえませんか?」と突撃して…中日・柳裕也が振り返る横浜高の青春時代と「大谷世代」の本音
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/24 11:01
中日・柳裕也の横浜高時代
明大ではエース兼主将として明治神宮大会を制する原動力となった。現在は中日の選手会長として奮闘しているが、当時から卓越したリーダーシップを発揮していた。広島の森下暢仁(大分商)は大学の3学年後輩。本人が望めば高校からの直接ドラフト指名もあったはずだが、監督、1学年上の主将だった坂本誠志郎(阪神)とともに、大分まで出向いて「絶対に後悔させない。明治で一緒に野球をやって、4年後にドラフト1位でプロに行こう」と口説いたエピソードは有名だ。
オールマイティの原点
多くの投手が150km台を投げ、パワーピッチが幅をきかせる時代だが、柳は球速ではなく球質で勝負する。カットボール、チェンジアップ、縦割れのカーブと変化球も多彩。現時点でのピークは2021年だろう。防御率、最多奪三振のタイトルを獲得し、ベストナインにも選出された。球速がなくても三振は取れるという証明だ。横浜高の小倉清一郎元部長の指導により、フィールディングや牽制、クイックモーションなどのテクニックも抜群。同年はゴールデン・グラブ賞にも輝いている。さらに今シーズンは8番を任された試合もあり、二刀流とまではいかないが投手としての打力はリーグ屈指といっていい。
オールマイティの柳も、30歳になった。今シーズンは念願の開幕投手も務めたが、不調から6月17日に出場選手登録を抹消され二軍で調整を積んできた。8月24日には約2カ月ぶりとなる一軍登板で巨人戦に先発する予定。苦しんだ時間が長かった分、胸の内に秘める思いは強い。
「ドラゴンズは弱くない」
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キャリア8年目でいまだ体験していないことがある。
「本当に勝ちたい。そう思っているのは僕だけではないんですが、ファンの皆さんも待ち望んでいること。ドラゴンズは弱くない。そう証明してみんなで喜びを分かち合いたいんです」
入団からAクラスは2020年だけ。しかし、新型コロナ禍による不規則シーズンでセ・リーグのCSは開催されていない。かつては常勝を誇ったドラゴンズなのに、ほとんどの選手が優勝はおろかポストシーズンも戦ったことがない。野球選手としての円熟期。プロ入りまでは勝つのが当たり前のチームにいただけに、柳の勝利への渇望感は相当なもの。その牽引役でありたいと願っているはずだ。