甲子園の風BACK NUMBER
「いいチーム!」早実OB清宮幸太郎も絶賛の大社旋風…号泣エース馬庭優太とは何者か「味方のミスにも“全然大丈夫やから”」「これは打たれない」
text by
間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/18 17:02
大熱戦の中で投げては完投、打ってはサヨナラ打。大社旋風の中心に、馬庭優太がいる
「自分たちが応援されているとすごく感じましたし、野球は最高だなと思いました。展開としてはきつかったですが、大声援を受けて試合ができるうれしさを感じながら投げていました」
タイブレークとなった10回表の守備。2者連続でバントを封じて、早実に1点も許さなかった。その裏、大社も得点できず、延長11回に突入した。馬庭の投球数は134球に達していた。
ところが、球威が衰えない。
先頭打者を併殺打に仕留める。その後、2死一、二塁となって、山中と5度目の対決。5球連続の直球でショートフライに打ち取った。試合前のブルペンでは本調子とは程遠かったはずが、11回を2失点自責点1で投げ抜いた。
感極まるエースの球に、捕手は驚きを隠せなかった
10回、11回のマウンドから降りる際には感極まった表情を見せた馬庭だが――石原勇翔捕手はエースの投球に驚きを隠せなかった。
「タイブレークに入ってから、まだ試合が始まったばかりのように球の威力が上がってきました。全然、疲れを感じさせませんでした。球を受けていて、ずっしりきました。球数は増え、厳しい場面が続いて精神的な疲れもあるはずなのに、『これは打たれない』というストレートを投げていました」
チームメートも馬庭を助けようと必死だった。タイブレークの緊迫した場面で落ち着いた守備を見せて盛り立てた。
そして、延長11回裏に最高の場面を馬庭に用意した。
無死一、二塁から、代打で起用された安松大希選手が三塁方向へバント。勢いを殺した打球はライン際に転がり、内野安打となった。無死満塁。馬庭がギアをトップに入れて打席に向かう。
「安松はバントが得意なので決めてくれると信じて見ていました。タイブレークで仲間が守ってくれましたし、スタンドからは大声援が聞こえてきました。あまり打撃に自信はないんですけど、最後は自分が打つしかないと思っていました」
最高のメンバーが後ろについていますから
カウント2ボール1ストライクからの4球目だった。
「投手はストライクがほしい場面。必ず直球がくる」
馬庭は狙っていた直球をセンターへ弾き返した。三塁ランナーのホームインを確認すると、両手を広げて、再び涙を浮かべながら歓喜する仲間の輪に加わった。