甲子園の風BACK NUMBER
「いいチーム!」早実OB清宮幸太郎も絶賛の大社旋風…号泣エース馬庭優太とは何者か「味方のミスにも“全然大丈夫やから”」「これは打たれない」
text by
間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/18 17:02
大熱戦の中で投げては完投、打ってはサヨナラ打。大社旋風の中心に、馬庭優太がいる
「いつも藤原は自分の投球を助けてくれる存在です。ミスはあっても良い選手なのは変わりません。プロではないからエラーは起きます。味方のミスをカバーできるのが強いチーム。それに、点が取れなくて接戦の展開になったのは藤原1人の責任ではありませんから」
一気に流れが相手に傾きかねないプレーだった。馬庭にショックがないはずはない。
大丈夫やから、全然大丈夫やから
だが、仲間のミスを力に変えた。
ストライク先行の投球で2アウトを取り、警戒していた宇野も直球で押してセンターフライ。今度は藤原が確実に打球をグラブに収め、馬庭は最少失点で切り抜けた。
捕球した藤原がダッシュでベンチへ戻る。その姿にスタンドからは大声援と拍手が起きる。観客の応援が大きく大社へと傾いた瞬間だった。
藤原はベンチで馬庭から声をかけられた。
「大丈夫やから、全然大丈夫やから」
エースに落ち込む様子はない。むしろ、勝利への執念が高まっているように見えたという。
「声をかけられて救われました。感謝しかありません。馬庭は普段からミスが出たらカバーする意識を持っている選手です。マウンドで頑張っている姿を見て、自分も頑張らないといけないと気持ちを切り替えました」
下馬評では圧倒的に不利だった大社は、粘り強く早実に食い下がった。長打を期待させる派手さはないが、簡単にはアウトにならない。早実のエース中村心大投手が得意とする高めのつり球を見極める。序盤3回で66球を投げさせ、125球を投げ終えた7回で降板させた。
大声援を受けて試合ができるうれしさを
強者にひるまず、チーム一丸で立ち向かう姿勢は観客の心を奪った。スタンドはイニングを増すごとに、大社への声援が大きくなる。アウトを取れば拍手が沸き、チャンスをつくれば歓声が上がる。大社のアルプスと一体になった手拍子と応援が甲子園を包んだ。
9回裏に大社が同点に追いついて試合がタイブレークに突入すると、大社の背中を押す声援が一層大きくなる。
その声に応えるように、もう一段、馬庭がギアを上げた。