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「最初のホールドをつかめない」スポーツクライミング、154cmの森秋彩20歳に不利なルートセットに批判も…本人は毅然「身長は関係ない」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA

posted2024/08/12 17:03

「最初のホールドをつかめない」スポーツクライミング、154cmの森秋彩20歳に不利なルートセットに批判も…本人は毅然「身長は関係ない」<Number Web> photograph by Tetsuya Higashikawa/JMPA

スポーツクライミング女子複合、ボルダーで8人中7位と出遅れた森秋彩だが、後半のリードではトップのポイントを記録して巻き返し4位に

「クライミングを楽しむことを忘れていたから、登りたくないときは登らない、心から登りたいと思ったときだけ登って、クライミング本来の楽しさというのを取り戻す。成績至上主義という観念を外していきたいなと思いました」

 高校を卒業するとプロとしてクライミングに専念する選手も少なくない中、2022年4月、筑波大学に進学した理由のひとつにもそれは関連している。

成績よりも、壁に向き合うこと

「プロになってそれを仕事にして生活するとなると、やっぱり成績を気にしてしまったりすると思います。成績が直接お金にもかかわってくるから、いい成績を残さないと、と考えてしまいます。そっちが軸になるのが嫌でした」

 学業、アルバイトに励みながら、それをハンディとせず、世界トップのレベルに伍して競ってきた。

 成績よりも、大切にしていることがある。

「ちっちゃい頃から、あまり他人を気にしていなかったです。今もそうです。人にじゃなく、自分に負けるのが悔しいですね。だからクライミングでも、ほんとうに人に対して、というのではなく、試合の勝ち負けよりも壁に向き合うことがいちばんだと思っています」

 だから悔しさはある。

「まずは目標にしていたリードでトップ(ホールド)を獲ることができなかったのは悔しいですし、(ボルダーで)得意な(第2課題の)スラブを登れませんでした」

 悔しさはまた、力となる。

「悔しさを持ち帰るにはいちばんいい順位なので、素直に受け止めて頑張りたいです」

 トップを目指す挑戦は終わらない。

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