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「最初のホールドをつかめない」スポーツクライミング、154cmの森秋彩20歳に不利なルートセットに批判も…本人は毅然「身長は関係ない」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2024/08/12 17:03
スポーツクライミング女子複合、ボルダーで8人中7位と出遅れた森秋彩だが、後半のリードではトップのポイントを記録して巻き返し4位に
意図的に森を狙ったということはまずないが、そもそもつかむことすらできない選手が出るような設定では、選手の技量を競う以前に勝負が決まってしまうのではないか……疑問の声が起きたのは自然なことかもしれない。
森本人は毅然としていた
それでも森は、毅然としていた。
今大会に限らず、身長面で不利な場合は少なくない。その中で競ってきた。
「身長は関係ないと思います。リーチ的にも強度的にも、自分には不可能な課題にも挑戦して行けるところまで行こうと取り組んできたのが強くなれたひとつかなと思います」
と、技術の向上に力を注いできた。
毅然としているのは今回だけではない。
以前にもぶつかった理不尽
森に注目が集まったのは東京五輪代表の有力候補に目された頃だ。日本の出場枠は「2」。2019年世界選手権で日本女子最上位の2位だった野口啓代が内定し、もう1名は対象とする選考大会を経て選ぶことになっていた。その世界選手権では野中生萌が5位、森は6位の成績を残していた。ところがのちに国際連盟が2人目として野中が出場権を獲得したと発表。日本はCASに提訴するなどしたが決定は覆らず、代表選考レースは突如、終わりを告げた。森の東京五輪への道も閉ざされた。
「オリンピック予選でフランスまで行ったのに無効になって、何のために行ったのかなと思ったし、ちょっともやもやしました」
でも、怒りをぶつけることはなかった。
「自分がもっと世界選手権でいいパフォーマンスをしていれば巻き込まれなかったから、ネガティブな思考に陥るというのは違うかなと思いました」
むしろ成績を意識し過ぎたことを反省し、コロナ禍の影響もあり、一時的に国際大会から遠ざかった。