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「戦友ですね」野中生萌(24)と野口啓代(32)を強くした“年の差でもリスペクト”のライバル関係《スポーツクライミング銀・銅メダル》
posted2021/08/07 20:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
スポーツクライミング女子複合決勝のハイライトは、銀メダルの野中生萌と銅メダルの野口啓代が、メダル獲得が確定した瞬間に見せた涙の抱擁だった。両選手が揃ってミッションを達成できた喜びと、特大の重圧から解放された安堵感に包まれていた。
競技後に野口は「生萌ちゃんとは長く一緒に頑張ってきて、ふたりで金銀がよかったんですけど、一緒に表彰台に上がれてよかった」と胸をなでおろした。
野中も「啓代ちゃんとメダルが取れてよかった。ふたりで一緒にメダルを取りたいとずっと思っていて、それが実現してうれしいの一言。諦めずにすべてを乗り越えてきてよかった」と喜んだ。
初めて競技を観た人は、ふたりが練習でもプライベートでも一緒にいるように思うかもしれない。だが、実際のふたりは仲が悪いわけではないが、一緒にいるのは海外遠征や合宿くらい。それぞれが自立して競技に向き合い、お互いをクライマーとしてリスペクトしながら刺激をもらう間柄だという。
野口の決意「クライミング1本で食べていく」
野口がクライミングに出会ったのは、11歳のときのグアムへの家族旅行。帰国後はやる機会に恵まれなかったが、その年の秋口に自宅から30分ほどの場所にクライミングジムがオープン。そこから継続的に始めることになったが、当時のことを野口はこう打ち明ける。
「クライミングも好きは好きでしたけど、ジムに行くと友だちに会えるのが楽しみで。ジムには友だちとおしゃべりするため通っている感じでしたね」
もともと引っ込み思案な性格ながら、体を動かすことは大好きだった。クライミングを続けることで、少女は世界を広げていった。中学生になるとクライミングにも真剣に向き合うようになり、実力をメキメキと伸ばした。
高校1年の2005年に国際大会にデビュー。クライミング1本で食べていくと決意し、入学したばかりの大学を退学してからは、長きに渡って世界トップレベルで競い合いほとんどの試合で表彰台に立ってきた。