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無敵と思われたレスリング・須崎優衣もできなかった「五輪連覇」…今こそ再評価したい、怪物フェルプス、ルイスに並ぶ伊調馨「4連覇」の偉業
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/08/09 11:00
女子選手史上初の4連覇を達成した伊調馨。パリ五輪解説者として「小学時代は卓球部」「男に生まれてレスリングやってみたかった」など意外な発言で話題
その後、長年の競技生活の疲労の蓄積から怪我を負ったり、体調不良に陥ることもあったが、リオデジャネイロ五輪で4連覇を果たす。
4つ目の金メダルを得たあと、伊調はこう語っていた。
「(採点すれば決勝は100点満点で)5点です」
「やっぱりレスリングは難しいです。心技体あってこそのスポーツなのだと思いました。だからこそやりがいがあります。練習したいです」
4連覇を達成してなお、理想のレスリングを目指したい、という意欲がそこにあった。その途上にいるという自覚があった。
連覇は難しいが、取り戻すことにも価値がある
長年、第一線にいて勝ち続けるには、まずはコンディションをどう保っていくかが問われる。その中でどうプレーを進化させていくかも重要だ。その根本には、日々、地道に練習し続けられる気力の有無がある。
伊調の場合には、2大会連続優勝したあとに自身の気持ちの面で試練が訪れ、その克服が4連覇へとつながっていった。そうしたブランクを含めて、4大会連続優勝までの10年以上の期間、継続して打ち込んだ姿勢こそが結果とともに大きな価値を持っている。
東京五輪後、一度は引退してから復帰し、5連覇を成し遂げたロペスヌネスも同様だ。3連覇した柔道の野村忠宏もまた、「継続」する姿勢を保てた一人だといえる。
連覇そのものが容易ではない。そして一度失って取り戻すのも簡単ではない。だからこそ、それにも大きな価値がある。
須崎は連覇を果たせなかった。それでも、取り戻すチャンスはある。