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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
野茂英雄のメジャー戦力外“5日前”「野茂の口からイチローが語られた」じつはイチローと最後の対戦があった…取材記者が見た“2人の姿”
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/01 11:02
野茂英雄がメジャー戦力外を受ける5日前、イチローと5度目の対戦があった
結果は空振り三振。だが次の打者には犠飛を打たれた。5回も続投したが二塁打、四球、四球で無死満塁としたところで降板。イチローを抑えたこと以外はさんざんな内容で1回を3安打4失点だった。
野茂がイチローを語った日
フォークを空振りしたイチローは試合後に久しぶりの野茂との対戦について「あの淡々とした感じっていうのはいいよね」と言った。
野茂は「ランナー一塁でしたし、最初のバッターをきっちりとってあの回を抑えたかったですけど」と振り返り、イチローを抑えたことには「たまたまもありますけど、アウトを取れてよかったのはよかったです」と話した。
イチローをはじめ、日本人選手との対戦に特別な思いはあるのか?
そう問われると言った。
「ないですね。こっちに来ている日本人、みんないいバッターですし、気を緩められないというのも他の選手と変わらないですし」
2008年というのはヤンキース松井秀喜、マリナーズ城島健司、アストロズ松井稼頭央、フィリーズ田口壮、パドレス井口資仁、レイズ岩村明憲、カブス福留孝介と、メジャーで日本人野手が最も多く活躍していたシーズン。そうした選手の一人として語ったとはいえ、イチローという打者に対する思いを口にしたのはこのときが初めてだったのではないだろうか。誰一人として気を抜くことができない打者ばかりなのがMLBという最高峰の世界であり、イチローもそのMLBの打者なのだと。メジャーでの5度の対戦の最後の最後に、野茂の口からイチローが語られた瞬間だった。
その5日後…野茂はメジャーを戦力外に
野茂が現役としてメジャーのマウンドを去ったのはそれから5日後。ロイヤルズが野茂をメジャーの出場登録から外し、戦力外を告げた。そして7月に現役引退が発表された。
思えば野茂とイチローの対戦は常にどちらかの節目がからんでいた。最初はイチローのメジャーデビューのシーズン、次が野茂の日米200勝がからんだシーズン、そして野茂の現役引退直前。互いにパイオニアと呼ばれた2人にとって、それはまるで宿命のようなめぐり合わせだった。2人の対決は5試合、14打席で12打数4安打の打率.333、1打点、2三振だった。
〈「『息ができなかった』野茂とイチロー“まさかの初対戦”」編からつづく〉