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野茂英雄のメジャー戦力外“5日前”「野茂の口からイチローが語られた」じつはイチローと最後の対戦があった…取材記者が見た“2人の姿”
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/01 11:02
野茂英雄がメジャー戦力外を受ける5日前、イチローと5度目の対戦があった
「今日なんかは、日本では見たことのない、スライダー回転の球を投げたり、4年前はカーブを投げていました。そうやって考えてやっている。いつまでも当時の自分にこだわると、おそらくどこかで失望感を味わうことになる。自分なりに変えていこうという意識が見えるし、長くやっているのはそういうことじゃないですかね」
野茂「特にはないですけどね」
一方の野茂は、納得できる投球内容とはいかず、もどかしげながら淡々としていた。
「やっぱり4点を取ってもらって、守り切れなかったというのが……。調子自体は悪くなかったですし、この前はロケーションが悪かったですが、今日は良かった。本当はラクに勝ててもおかしくない展開だったんで、それがピンチを迎えてしまって。本当に、勝てる状態でマウンドを降りたかったです」
イチローとの4年ぶりの対戦について聞かれても、淡々とした口調は変わらなかった。
「特にはないですけどね。フォークも打たれた1球しか……。あ、2球投げたか。それよりもやっぱり、先に4点もらっているので、それを守り切れなかったのが……。悔しい? そうですね」
「最後の対戦」…野茂はリリーフ登板
野茂とイチローがその次に対戦したのは3年後の2008年4月15日。再びシアトルでのことだった。野茂は日米通算200勝を達成した後の2005年7月にデビルレイズを戦力外となり、その後はヤンキース、ホワイトソックスのマイナーでプレーしたが2006年に右肘を手術。長いリハビリを経て3年ぶりにロイヤルズでメジャーに復帰していた。だが復帰後は苦しい登板が続き、わずか3試合で4月20日に戦力外、4月29日に球団から自由契約となり、7月に現役引退を発表した。イチローとの対戦は、現役最後となった試合の1つ前の登板だった。
一方のイチローは、円熟味の増したメジャー8年目。前年には打率3割5分1厘をマークし、2年連続4度目のリーグ最多安打を記録していた。
野茂は同点の4回無死一塁から、2番手でマウンドに上がった。それまで先発にこだわってきたが、その年はリリーフとして起用されていた。慣れない役割で、しかも走者を背負っての登板。1人目の打者に右前打を許し、2人目の打者には二塁打を浴びて走者を1人かえした。
無死二、三塁で迎えたのがイチローだった。