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「幼少期に離婚…最高の父親ではなかった」ピンク髪のロッドマン(22歳)が”異端児”と呼ばれた父から教わったこと〈なでしこ撃破→メダル確定〉
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by L:AP/AFLO、R:Getty Images
posted2024/08/07 11:18
なでしこジャパンから決勝ゴールを奪ったアメリカ代表トリニティ・ロッドマン。父はあのNBAのスター選手だ
7月25日の五輪初戦時のこと。ザンビア戦で五輪初ゴールを決めた後、事情を知らないテレビショーのレポーターから「お父さんから“よくやった”と言って貰えましたか?」と問われた際のトリニティのこんな返答は象徴的でもあった。
「いいえ。でも母がそこにいてくれて、ハグしてくれたので」
もちろん外野の人間の勝手な思い入れではあるが、デニス・ロッドマンほど知名度のある元スターが、五輪でヒロインになった娘のストーリーの中で複雑な位置に止まっていることはやはり残念でもある。また、トリニティの思いを汲み取れば、一般的に“デニスの娘”として注目され続けるのは不本意でもあるのだろう。
それでも面影を感じてしまうのは…
ただ……それでもトリニティの勇姿の中に、否が応でも父デニスの面影を感じてしまうのは熱心なNBAファンだけではないはずだ。特にそのファッションセンス。アメリカ代表では背番号5を背負うトリニティは、今大会では腰付近まであるピンクの三つ編みヘアーでプレーしている。独特の魅力を持つ女性アスリートは、7月に公開されたVOGUE誌の記事で父のファッションについては好意的に語っていた。
「NBAのクレイジーなファッションは父が始めたんですよ。そんな私の意見に同意しない人はいるんでしょうし、私はバイアスがかかっているのかもしれません。ただ、彼がやったことは今にも通じているように思えるんです。自分自身を表現するのを恐れる必要はないと世界に示してくれました」
ここでのトリニティの言葉から、父に対する静かな愛情が透けて見えることに思わずホッとさせられる。もちろん複雑な思いは消えないとしても、まだ20代前半の若さで自分なりの形で父との関係に折り合いをつけ、その上でオリジナルのストーリーを紡ごうとしているのは心強くもある。